アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
夏めくにしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
夏めく
-
「あのおっさん、絶対お前のことエロい目で見てた」
「はあ?そんな訳ないでしょ」
「いや、見てた」
「被害妄想きつい」
持って帰っている間にアイスが溶ける、と彼が言い出したのがついさっき。
炎天下で遊ぶ子供も流石におらず、日光が遊具の表面をジリジリと焼いている。
だが、日陰だとカラリとした風さえ吹いていればそれなりに涼しく、俺達は近くの公園で念願のアイスに辿り着いていた。
「そんなこと言うなら、コンビニにいた女子高生だってお前のこと見てた」
「いや、あれは健全な視線」
「健全な視線ってなに」
思わず笑いながら問うと、そりゃエロくない視線ってことだろ、と真面目に答えるものだから余計に面白い。
「これ美味しい」
「俺のも美味い」
「…ちょっと交換しない?」
「言うと思った。いいよ、残り全部やる」
「ほんとに?やったー、ありがとう」
彼が食べているみかん味のアイスが美味しそうに見えて堪らず提案すると、3分の1ほど残ったアイスを俺に渡してくれた。
でも実は、この流れはよくある。逆もある。
食の嗜好が似てるって良いよなって話、この前したなぁ。
「あ、待って。お前のどんな味か食べてみたい」
「いいよ。はい、これ」
どうぞ、───と言い終わる前に口を塞がれた。
熱を持った舌が侵入し、味を堪能するかのように口内でゆっくり暴れる。
顎をやんわりと掴む手で喉をするりと撫でられ、夏なのにびくりと鳥肌が立った。
最後に名残惜しいとでもいうふうにリップ音を立てててゆっくりと唇が離れ、蝉声が遠のいた時間が終わりを告げる。
「あっま」
「チョコだしね。…今日は不意打ちの気分なの?」
にっこり微笑む顔を見ていたら、なんだか居た堪れない気持ちになってくる。
「そうかも。ていうか、顔あか」
「そりゃそうだろ。ここどこだと思ってんの。外ではやめて」
「誰もいないから大丈夫」
そういう問題じゃないんだけど。
内心ため息をつきながらも指摘通り頬は熱いままだ。
「付き合って何年経つのってくらい反応が初々しくて俺は嬉しいよ」
「馬鹿にしてる?」
ごめんごめん、と笑い声をあげる彼をじとっとした目で見つめる。
でも、人前ではクールなくせにこうやって俺をからかって楽しそうにする姿は、好きだ。
笑うと下がる目尻とぽんぽんと頭を撫でる頼もしい手は俺だけのもので、誰にも見せたくないなって思う。
「帰るか。手繋いで帰って一緒に風呂でも入る?」
「やっぱり馬鹿にしてる?」
「そうかそうか、したいんだなー」
「…」
「いたっ、…手抓るなよ」
すっかり溶けてしまったアイスといまだふわふわする頭。
暑い夏も、案外悪くないのかもしれない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
2 / 3