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望まぬ変化 2にしおりをはさみました!
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望まぬ変化 2
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入学式が終わった後も俺は陸の顔をまともに見れないままで、その日はろくに話もせずに一目散に帰宅した。
「あんた今日なんか変」
「は?」
「ずっと変な顔でぼーっとしてるじゃない。」
帰ってきてからも悩み続けていたのがどうやら顔に出ていたらしい。リビングで内容が頭に入ってこないテレビを眺めていると、二つ年上の姉が気味が悪そうに聞いてきた。
「何?なんか悩み?まさか恋とか?」
「ゥゲッッホ!!」
「えっまさかの図星!?」
「ちげーよ!!男友達!友人関係で悩んでんの!」
「あー分かった、王子でしょ。あ、クラス別れた?」
王子、とはその美貌から陰で呼ばれている陸のあだ名だ。陰で、といっても俺がバラしたので本人はそう呼ばれていることを知っているのだが。
一回、陸が食べていたおにぎりの海苔を口の端に付けていたので「うっわ王子に点が付いてる!玉子!玉子じゃん!」とからかいまくった結果、拗ねた陸にその日一日無視されてしまったことなんかもいい思い出だ。
ちなみに、常に王子の隣にいる俺のことを他クラスのやつらが「御付きの者」→「つきのもの」で陰で「月経」と呼んでいたのもちゃんと知っているからな!
誰だよ考えたの!
顔面格差はあだ名にまで影響するらしい。世知辛い。
「クラスは別れてない。両方3組だよ。」
「なんだ良かったじゃん。また一年べったりね〜…ってじゃあ何をそんなに悩んでるのよ。あっ、最近あだ名が「月経」じゃあんまりだからって「ルナルナ」って呼ばれるようになったこと?」
「知らねーよなんだよその微妙な気遣い!」
だから誰だよ考えたやつ。
もはや発展しすぎて意味が分からない。
「んで?結局なんなのよ。」
「…さっきさ、姉ちゃん"またべったりね"って言ったじゃん。」
「それが?」
「……そんなにべったりして見えた?」
そう聞くと、姉は信じられないものでも見たかのような顔で「はああ?」と叫んだ。
「休み時間もお昼ご飯も体育のペアもいつも一緒で今更何言ってんの。数多の女子がなかなか王子と二人っきりになれないって泣いてたわよ。そしてそれを生理痛と呼ぶ。」
「もういいよそのあだ名シリーズ!」
思わず頰を膨らませると全然可愛くないと言われ余計にムッとする。陸なら、どんなにぶりっ子しても様になって見えるんだろうなあとふと思った。まあ陸が不貞腐れるときは、頬を膨らませるのではなく唇を少し尖らすのだけれど。
「やっぱ俺、陸離れするべきか…」
「何その肉離れ的な。てか陸から離れるなら離陸か。鳥人間?」
「いや、そういう話じゃなくて。自立?というか…」
「まあさ、別に無理に離れなくてもいいんじゃない?せっかく仲良くなったんだし、嫌いになった訳じゃないんでしょ?」
「そりゃまあ…」
それもそうかもしれない、と姉の言葉に少し肩の力が抜ける。いつもこき使ってくるしよく暇つぶしに馬鹿にされるけれど、それでもこうやって素直に相談をしてしまうのはなんだかんだ言っていい姉でいつも真剣に答えてくれるからだ。
俺が小さくありがとうと言うと姉は笑って、冷蔵庫から出した麦茶をグラスに注ぎ一気に煽った。
「ま、それに」
そのままリビングを出て行こうとした姉は、ドアを開けた後振り返って付け加えた。
「そのうち王子に彼女ができたらどのみち少しは自立せざるを得ないでしょ。あんなイケメン、今いないのが奇跡みたいなもんなんだから。」
ゆっくりと閉じていくドアの音が、バタン、とやけに大きく響いた気がした。
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