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五月に入り、ゴールデンウィークも過ぎた今日
爺さんの店から逃げるように立ち去った日から
もう既に二週間近く経っていた。
大学内は休暇中の課題を恨む声や
旅行や遊びの思い出話といった声で相変わらず騒がしい
俺はというとゴールデンウィークなんてものはなく
ひたすらバイトに明け暮れていた。
あれから爺さんのところには顔を出していない。
元々頻繁に行っていたわけではないが
それにしてもあれはないだろうと一人反省する。
休み明けに学校で金井に会うこともあったが変わらず声をかけられたが
気にしていないのか気を遣われているのか
あの日のやり取りについて金井が何かいうことはなかった。
どちらにしろ触れられないに越したことはないがあいつも飽きないな。
自分でも言うのも何だが俺は結構ひねくれてると思う。
正直、人との会話とか仕事以外では極力避けたい
接客業をずっとしているせいか
バイト時に全ての気力を使い身内には冷たくなる、らしい
自分では普通だろと思うが前に店長にそう言われた。
だから飽きもせずああやってプライベートで付きまと…話しかけてくるやつは珍しい
あいつアホそうだし
そういうのを気にしないやつなだけかもしれないけれど
近頃は金井だけでなく
その友人の佐伯や小森にも声をかけられるようになっていた。
小森とは元々講義で顔見知りだったけれどよく話すようになったし
佐伯とも意外にも音楽の趣味が合い二人だけで話すことも増えた。
「あ、二葉」
呼ばれた名前に振り返る。
「小森か。お前に呼び捨てにされるの慣れないな」
「そう?もう君付けも面倒だし俺は仲良くなれて嬉しいけどね」
「お前なんかそういうの…意外とサッパリしてるよな」
「それよく言われるよ。まだ早いけど次出るんでしょ?俺もだから行こ」
「お、おう。」
俺の中で小森は優しく物腰柔らかそうな好青年という印象だった。
だからもっと穏やかな性格かと思っていたのだが
金井や佐伯には容赦ないことを言ってみせるから少し驚いた。
印象とは違い、本人は意外とさっぱりしていて一緒にいても気が楽だ。
俺は大学で親しいと呼べる奴はいなかったから
最近のそういったやり取りに照れくささを感じはするけれど
嫌な気は全くなかった。
小森は金井とも佐伯ともまた違う
雰囲気云々もそうなのだが
ふとした会話でしっかりしている、大人だなと思うことが多い
まあよく一緒にいる二人が子どもっぽすぎるだけなのかもしれないけれど
そして三人の中では唯一恋人がいる、らしい
佐伯情報だから信憑性にかけるが酔うと惚気が炸裂するとのことだ。
とにかく、あの三人の中では一番の常識人というのがオレの今の見解だった。
「ああ、意外って言うなら俺は翔太の方が意外だったよ」
「金井?」
思い出したように小森の口から出たのは俺の悩みの一つである金井だった。
「そう。あいつと俺は中学から同じなんだけどさ、こんな誰か一人に執着してんのは初めて見たかな」
「そう、なのか?というかお前ら中学からの付き合いだったのか」
「まあ単なる腐れ縁みたいなもんだけどね」
苦笑混じりにそう言われ
その表情から前から苦労はしてるんだろうというのは感じ取れた。
「あいつの中高とかヤバそうだな」
「クラスのムードメーカーみたいなとこはあったけど案外広く浅くみたいな感じだったかな」
だから今の翔太は意外
そう笑う小森に俺はそうか、としか言えない。
そんなことを聞いたからと言って別に俺の中で金井に対する何かが変わる訳でもない。
「それにあいつカッコつけだしな」
ニヤリと笑ってみせるその表情は悪戯っ子のようで
佐伯が以前「小森はありえねーくらいモテる」と言っていたのを思い出した。
落ち着いた雰囲気で常識人
そして極め付きにはこの笑顔
きっとこういうのをギャップ萌え?とかいうのだろう
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