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14にしおりをはさみました!
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14
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顔色がどことなく変だ。ほんのりと赤い。瞬きの回数が多く、言葉もぎこちない。
「悪い、やっぱ俺、帰るわ。んで、帰る前に残った酔をさましたいから、シャワー借りていい??…というか、シャワーある??いきなり浴槽を借りるのはちょっと躊躇いがあって…。」
「ああ。シャワーならありますよ。浴室はこっちです。緊急時みたいなもんだし、遠慮なく使って下さい。」
「おう、サンキュ。」
我妻を浴室に案内して、後輩はやれやれと肩を落とす。
(酔っ払い鬼上司が家に来るってなったから、どうなることかと思ったけど…。)
どうやら無事に一日が終わりそうだ、と考え、落合は息も漏らす。
(…にしても、我妻さん、気持ちよさそうにグイグイ酒飲んでいたな~。)
落合も多少は飲んでいるし、あの様子なら上司はこの後、自力で帰っていくだろう。
(…なら、俺は用済みなわけで。)
落合は目をついと眇める。薄暗いタクシーの車内。肩に寄りかかってきた温かな頭部。朱がさした生っ白い頬。背中で服越しに感じた、ほのかな体温。
(ヤバ…。)
落合は急いで冷蔵庫を開き、冷やしておいた酒の缶を数本持ち出す。ビールと度数高め、容量のあるチューハイがあった。ビールは先程味わった。上司がいるとはいえ、すぐに立ち去りそうな雰囲気がある。何より、落合は疲弊しきって冷静な判断が下せそうにない。鬼上司
がまたクソ面倒なこと抜かしませんように、と願いつつ、チューハイ缶を開ける。どうせ、シャワーで済ませる気なのだ。短い時間で出てくるに決まっている。ちみちみ酒を舐めていればあっという間だ…。
テレビをつけ、バラエティーを眺めながら酒を舐め始める。テレビの上に置いてあるデジタル時計は、『PM:21:53』と数字が刻まれている。あと少しで一日が終わる。明日は休日だ。落合はそろそろと目を閉じていく。誰にも邪魔をされない休日が、彼を待っている。
温かいお湯の飛沫を片頬に受け、ハッと我妻は目を覚ました。驚いて辺りを見渡し…すぐさま頭を抱える。
(ね…寝ていた。人ン家の、それも部下にシャワー借りておいてグースカ寝ていた。)
自分の愚かさ加減に涙目になりつつ、我妻は手早く身体を洗う。お湯に当たっていたとはいえ、寝ている間、外気に晒され続けた肌はなかなか元の温度に戻らない。我妻は歯痒い思いで下唇を噛み締める。
(ああ、もう!!すぐ帰りゃよかったんだ。なのに、何で…。)
舌打ちを我慢して体を洗っていると、段々と温もりが戻ってきた。よし、そろそろ浴室から出よう。我妻はほっと胸を撫で下ろす。
(落合に長居してしまった非礼を詫びて、それから家に帰ろう…。)
我妻が考えていた、直後。背後でガタンッと勢いよくガラス戸が開く。
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