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◆にしおりをはさみました!
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やがて慌てた足音が近づいてきた。
放課後ということもあって職員室は人が
出払っていたのか、野球部の顧問教師が飛
び込んだボールの様子を見に来たようだ。
その教師が廊下の隅に座り込んでいる二
人の横を通り過ぎる。
通りざまに二人を見下ろしてきたが、高
取はその教師が数日前に岡本に手を出した
ことを知っていた。
不穏な視線がぶつかる一瞬。
しかし足を止めることのない教師はその
まま去っていき、また高取の名を呼びなが
らしがみつく岡本の目にその姿が映ること
もない。
教師は駆けつけた教室を見て何を思うだ
ろうか。
机や教卓をなぎ倒したような教室で上級
生は自らの精●で濡れる下半身を露わにし
たまま1人で伸びていることだろう。
両手と顎の骨が折れた上級生は高取にや
られたとチクるだろうか。
だが実際に骨を折ったのは飛び込んでき
たボールだし、何故下半身が露わになって
いるのかと問われれば言い訳もできないだ
ろう。
何より見た目からして体格で自分に劣る
下級生にやられたとバカ正直に白状するほ
どプライドは捨てられない脳味噌の持ち主
ではないか。
逆に教師は現場にはいなかったとはいえ
上級生が誰を犯したのかなんとなく察する
だろう。
しかし上級生を骨折させた原因はボール
であり、顧問である彼も何らかの責任をと
らされるはずだ。
誰を犯したとか、誰を殴った殴られたと
いうよりもただたまたま通りかかって運悪
くボールが当たった…そういうふうに片付
けた方がずっと丸く収まる。
この件は事故として処理される可能性が
高い。
そう結論付けた。
「君じゃなきゃ嫌だっ。
君じゃなきゃ嫌だよ。
お願いだから、何でもするからっ。
お願いっ…」
しがみつく岡本はいつの間にか耳元で懇
願していた。
怯えで震える声が芯を持って何度も高取
の鼓膜を揺らす。
今まで何を要求されても嫌だと言わなか
った岡本の口から紡がれる言葉。
望んでいた通りにはなったはずなのに、
望む通りの結果にはならなかった。
それが悔しくもあり、気持ち悪くもあっ
た。
「わかっただろ。
お前に突っ込んでくれる奴なんて腐るほ
どいるんだよ。
他をあたれ」
「嫌だ…っ。
僕は高取君じゃなきゃ嫌なんだ。
他の人なんていらない。
君がいい…」
最後の呟きはまるで願いのように夕暮れ
の空気に溶けて消えた。
「薬でもやって頭イカれてるのか。
もっとお前に優しくしてくれる奴でも選
べばいいだろ。
なんで俺なんだ」
今までずっと疑問に思っていたことが口
をついて出た。
その体を苛み、痛めつければ諦めると思
ったのに何故離れていかないのか。
しかしそれを問うことはただの暇潰しに、
ただ目の前にいたというだけで落書きを続
けてきた自分が岡本を気遣っているようで
ずっと声には出さなかったことだ。
ただひたすらに岡本の意志など無視して
きた。
自分の都合だけを押し付けて、岡本の願
いなど聞いてやらなかった。
それなのにいつの間にか自分は壊してし
まいたいと思うほど、岡本に興味をもって
いた。
いっそ他をあたればいいのにと思うほど
岡本を見ていた。
何故あの人は自分ばかり見ているのかと
思う時、自分もまた相手を見ているものだ。
それを自覚してしまうのが嫌だったから
意地になって興味のないフリで通した。
だがそれももう限界らしい。
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