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偽り＝SIDE S＝にしおりをはさみました!
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偽り＝SIDE S＝
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高校に入ってからというもの、本当につまらなかった。
中学時代のように、バカを言って楽しむようなダチもいないし、進学校ってだけで周りの期待が高く、必死に勉強しているような奴等ばかりだ。
県内トップの男子高だし、もちろんオンナもいない。
多少ランクを下げても、自分と合う様なやつらのいる高校に入ればよかった。
毎日窓の外を眺めてぼんやりとしてしまう。
髪を金色にすればまわりも諦めてくれんじゃないかと思い、一年の夏に金髪にして、格好もだらしなくしてみた。
高校デビューってヤツだ。
中学時代もそれなりに目立つ方だったから、すぐに目だって他校生と喧嘩になったが、合気道で鍛えていたのが役に立った。
同級生達も俺を遠巻きにみるようになり、先生からも注意も受けず、気がついたら周りには誰もいなくなっていた。
なのに今年に入ってから、やけに絡んでくる風紀の１年がいる。
今年の首席で入ったという、男である。
「瀬嵐先輩。いつになったら、その毛、染め直してくれるんですか」
静かな物言いで言葉を放つ男に、俺は校門近くで止められている。
男の名前は、長谷川西覇。
俺のこの格好にもいでたちにもまったく臆した様子はない。
「あ"！何か文句あんのかテメエ」
「ええ。校則に反してますから。文句を言ってます」
眼鏡の奥の目は俺がつっかかっても、物怖じすらみせない。
相当鈍感か、または、相当の天然か何かだろう。
綺麗に整った黒髪は、ピカピカと光っている。
なんの不自由もなく優等生しているお前にはわからねえよ。
ぐっと相手の胸倉を引き寄せて脅しを入れようと顔を近づけた。
「セイハ、弁当忘れてったぞー」
近くで低い声がかかり、振り返ると、極悪で有名な北高の制服を着た、銀色の髪の背の高い男が俺の吊る下げた男に向かって声をかけていた。
銀髪の……って鬼のハセガワ…じゃねえか？
まったく接点のなさそうな二人である。
…ン？ハセガワ？？？
長谷川西覇は、ちっとらしくもなく舌打ちをする。
そしてらしくもない口調で言い放つ。
「学校くンなって言ってるだろ。アニキ。」
って兄弟かよ。
似てない兄弟もいたもんだ。
鬼のハセガワは、このあたりでは知らないものがいないくらいの極悪ヤンキーである。
一人で東高を制圧したとか、ちんぴらを撃破したとかとんでもない伝説が数多くある。
こんなんが兄弟だったら、俺なんかにびびる筈もないのだ。
「おう、わりぃ。かーちゃんがもってけってうるせえから。オヤジ来るよりマシでしょ」
俺につるされながらのんきに弁当を受け取っている長谷川は肝が据わっているというか、俺が相手にされていないのだ。
「まあ、そうだけど。アニキも遅刻すンぞ」
弁当はきっちり受け取り、早くいけとばかりの表情で手をパタパタさせてアニキとやらを追い払う。
「あー、俺ァ、午前中サボるし。んじゃあ、弟のことヨロシク」
校門から離れたところに止めていたバイクに乗って、去ってく男を見送る。
「なあ。自分のアニキに毛ェ、染め直しさせてから俺に文句言えよ」
「……兄の高校に頭髪に関する校則はありませんよ。それ以上に、校則なんか破りすぎていてどこから言えばいいのかわからないですしね。瀬嵐先輩はとりあえず、髪とカラコンくらいですから」
俺の顔に手を伸ばして、目のあたりに指先を引っ掛ける様子に慌てて胸倉から手を放した。
目に指突っ込むつもりか、コイツ。
「ふざけんな。それよりイイのか？オマエのアニキが鬼のハセガワだって言いふらそうか」
「それ、僕への脅しですか？」
ふうっと息を吐いて、長谷川西覇は鼻先を指で掻いて眼鏡をずりあげた。
「ゆすりたかりは勘弁してほしいのですけどね」
ふっと周りを包むオーラが変わる。
こいつとは合わないと思っていたが、裏の顔をもっと見たいと思った。
「言いふらされたくねえなら、俺とつるめ」
「はあ？」
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