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初めての挑戦。
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エドワード様はおひとりで部屋に戻られた。
「風見さんたちは?」
「帰ッタヨ。」
ええ!!
ちゃんとお礼を言っていないのに、なんだか寂しかった。
でも、仕方ないよね。
風見さんの会社の人もいらしていたから。
「シンサク、ヨクキタネ。」
改めて、エドワード様から歓迎してもらった。
えへへ。
嬉しくてギュッと抱きつくと、扉が開いた。
「Please check my document. 」
(書類のチェックをお願いします。)
慌てて離れようとしたが、エドワード様が離してくださらなかった。
「Yeah, of course. 」
(いいよ、見てみよう。)
フジサワさんがエドワード様に書類を渡して、ちらりとおれを見た。
「Mr. Koala?」(コアラくん?)
「Are you joking? 」(冗談だろ?)
・・・もしかして、おれのことコアラって言ったのかな?
フジサワさんが肩を竦めて笑っている。
「・・・Okey, finish off the remaining work. 」
(いいだろう。残りの作業を進めてくれ。)
やっぱりふたり、英語で話をするんだ。
ちゃんと、勉強しなきゃ。
フジサワさんが出て行ってから、エドワード様に宣言した。
「おれ、一日も早くエドワードのところに来たいから、英語、もっと勉強します。」
「アリガト。良イ子ダネ。」
額にキスをもらった。
シンガポールにきて、現実が見えた。
お勉強を頑張らないといけないって分かってたけど、もっと努力しないといけないことが分かった。
どこに行っても英語は必要だった。
空港で風見さんが居なかったら、おれのリコーダーも没収されてしまっていたし、朝ご飯を注文するときも英語が必要だった。
エドワード様のお仕事を手伝うためにも英語が必要で、多分、生活するにも必要なんだと思う。
おれ、甘えてた。
教えてもらうことばかり考えてたけど、自分から勉強しなきゃ、間に合わない。
さっきのふたりの会話も、ところどころの単語しか分からなかった。
悔しい。
エドワード様の言葉が分からないのが、悔しい。
「いっぱい英語を喋れるように努力します。大好きなエドワードの言っている話を理解したいです。」
涙目で訴えるシンサクは、この旅で感じるところがあったのだろう。
必死な様子に、来てもらって良かったと思った。
「ワカラナイトコロハ、聞イテ。」
「はい!」
未来が明るくなってきた。
シンサクもヤル気に満ちている。
思ったより早く連れてくることが出来るかもしれない。
エドワードは嬉しくなった。
「You’re amazing. 」
(君は素晴らしいよ。)
「ふふ、Thank you. 」
愛の言葉を囁き合うふたりの会話を、トオルは扉越しに聞いて寒気がした。
エドワード・・・甘すぎる。
こんなエドワード、見たことがない!
こうも変わるものかね?
もう少し俺にも優しくしてくれても良いんじゃないか?
松岡くんの発音は、拙すぎる。
だが、一生懸命さは伝わってくる。
エドワードのために頑張ると言っていたが、ビジネスで使う英語は難しい。しかも、エネルギーに関する専門的な単語が多い。
日常会話では不自由しない俺でも、1年前は相当苦労した。
まだ、持ってたかな・・・。
ここに赴任した当初にノートに書き留めた専門用語。
それに、シンガポール特有の英語の言い回しやイントネーション、発音があり、最初、かなり聞き返した。
引き出しを探ると出てきた。
ボロボロになったノートだ。
・・・懐かしい。
日常会話が出来るようになったらあげようかな。
恋する気持ちなんて忘れてしまったが、頑張っている子は応援したい。
ま、穴兄弟だしな。
エドワードとセックス出来ないのは癪に触るが、エドワードが幸せそうな様子は、見ていて嬉しい。
「ふふ、あいらぶゆぅ。」
「I love you. 」
「あぃらぶ。」
「No No No, Love 」
「Love?」
「I love you. 」
「・・・I love you. 」
ケッ!!!むずむずする。
発音の練習だろうが、ラブの連発で鳥肌が立った。
サッサと書類を仕上げて、アパートメントに強制送還しなければ。
その足でどこかに出掛けよう。
聞こえてくる甘ったるい声を聞かないようにしながら、猛然とメールの本文を打ち込んだ。
添付して、送信。
電源を落として立ち上がった。
「ラブラブ煩い!この色ボケどもめ!!」
扉を開け放つと、エドワードの膝の上に ぽちゃぽちゃ松岡が乗っていた。
ケッ!
「I send it to the apartment!」
(アパートメントに送る!)
すぅっと息を吸い込んだ。
「Have it your way!」
(好きなだけイチャイチャしやがれ!)
この野郎どもめ。
リア充死ね!
憤然と車のキーを手に取った。
「Here we go. 」
(さぁ、行くぞ。)
フンッ!
エドワードも苦笑しながら松岡くんを降ろした。
「アパートメントニ、行コウ。」
「はい!」
大人しく付いてくるエドワードは、ボスだ。
だが、今日は土曜。もともとプライベートな日なのだ。
休暇を潰されたんだから、これくらいの態度でも上等だろう。
そんなわけで妙に強気になった俺は、ふたりを乗せてイチャコラするつもりだろうアパートメントに送り届けたのだった。
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