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結局。
成田が上級生に呼び出されてそれを見に?確認しに?行ったはずなのに。
なぜか俺は…
汚ねぇ用具倉庫の中で、いつも俺に纏わりついていたアホワンコに力づくで襲われてイカされて…挙げ句ストーカーチックな告白をされた。
…有り得ねぇ…
ファーストキスも初めて他人にされるエロいことも…全部がこのアホワンコだなんて。
悶々、モヤモヤとしている俺の視界の中にいるヤツはこっちを見て“いつもの”ワンコ顔で笑った。
「…圭ちゃん顔怖いよ。」
「なんでお前は笑ってられんだよ。」
そう言って…別にコイツは何も思うことなんてないんだな、と気付く。
コイツはいつもと変わらないんだ。
いつもと同じく俺の側から離れず俺といつものように過ごすだけだもんな。
…変わったのは…
コイツをアホワンコだと思い込んでた俺だけだ。
コイツはワンコなんて可愛いもんじゃねぇ。
コイツは…
「圭ちゃん…好き。」
コイツは…俺に発情してるエロワンコなんだ。
深い溜め息をついてフイッと顔を逸らす。
するとヤツは俺のアゴを指先で掴んで自分の方に向けて。
「可愛くないなぁ。」
「ああ、可愛くねぇよ。さっさと嫌いになってくれ、頼むから。」
「なるならとっくになってるよ。何年好きだったと思ってんのさ。」
「知らねぇよ。知りたくもねぇし。」
どこまで行っても平行線な俺とコイツの主張。
…てか当たり前だ。
コイツが俺をどう思ってるかは知らんが俺はコイツをただの金魚のフン程度にしか思ってねぇわけだし。
そいつに好きとか言われても…しかも男だし。
今日のコトを思い出して俺はまた身震いをした。
「とにかく、俺の断りなしに触んな。俺の許可なしに近付くな。」
「ヤダって言ってるでしょ。近付くし触るし。」
「マジコロス。」
「本気でヤならそのくらいして。でなきゃ俺は止まんないよ。」
テーブルに両肘をつき組んだ手の甲にアゴを乗せる成田。
その目はもう…俺の知ってる成田のじゃなくて…。
「お前が闘犬ってのはガチだったんだな。」
そう言って溜め息をついた視線の端でヤツは静かに笑った。
今日の学校でのナニガシのすぐあと。
職員室に呼び出された俺達とバスケ部の上級生達は揃ってその場で正座させられて…。
『今回のこの乱闘の…』
『首謀者はこの副部長ですよ!』
『なにを!?テメェ!』
生徒指導の先生の呆れ顔を見ながら俺は深い溜め息をついた。
…つーか。
『俺はカンケーないと思うんスけど。』
『いや、お前は微妙に関係してるんだな。』
『は????』
いきなりのわけわからん話にアホっぽい返事をしちまう。
『なんで!?俺はこの人達なんて会ったこともさ…』
『この乱闘の原因がどうやらお前さんだったらしいんでな。』
『はっ!?』
先生の言葉が俺には全く理解できない。
なんで?
…は?
つーか……。
『おい成田。この俺にことの全部を詳しく話せよ。』
『……いや。』
『その“いや”はなんの“いや”なんだ?話さねぇっつーなら俺はもう金輪際お前とは口利かねぇ…』
『バスケ部に入部した日にそこの副部長が圭ちゃんをマネージャーにするから連れて来いって言ったから。』
『はっ!?なんじゃそりゃ!?』
予想もしてなかった内容に思わず声が裏返る。
ムッとした顔で言ったきり口を噤んでしまった成田を横目にそのバスケ部のみなさんの方を向く。
すると奴らはバツの悪そうな顔をあちこちに向けて知らん顔を決めていた。
『…先生。この人達を尋問してもらってもいいッスか?』
俺のセリフに当の本人達は焦った様子に変わり互いに罪の擦り付け合いを始める。
そんで…自供した内容ってのが。
『…部の雑用…性処理込みの。』
『は?バカなのアンタ達。なんで男の俺が男のお前らの性処理しなきゃなんねぇんだよ。』
『本気で言ってんのか?ここは花のホモ校【白草学園】だぜ?』
なぜか胸を張って答えてる上級生達に本気で鳥肌が立った。
『…成田ん家から唯一の徒歩圏内だから選んだのに…ここがそんな学校だとは…』
深い溜め息をついた俺は横で先生に怒られてる奴らを見ながら更に深い溜め息をついた。
「圭ちゃん、三年の加賀さんって知ってる?」
学校でのショッキングな事件?を思い出してたところで成田がそんなことを聞いてきて…。
「加賀?加賀哲也さん?」
つい最近知った名前を返すと成田はなぜか渋い顔付きで眉を寄せた。
「知ってたんだ…。」
「つーかなんでお前が知ってんだ!」
「いやいやそれは俺のセリフ!」
テーブルに身を乗り出した俺のすぐ側に顔を近付けて成田が唇にキスをしてきた。
…だから…。
「テメェ…マジコロスって言っただろうが!」
ヤツの襟をグッと引き上げて力一杯絞めつける。
涼しい顔をしたままのヤツは俺の手を握ってそれを離させると懲りずにまたキスをして。
「そんなことよかなんで圭ちゃんが加賀さん知ってんのかが知りたい。」
「…なんかムカつくぜ。」
「もっかいキスするよ?」
すわった目を向けられて身の危険を感じた俺はヤツから離れて元いた席に座って加賀さんの日に焼けた男前の顔を思い出した。
「バイトの先輩。すっげ親切にしてもらってる。」
「マジで!?」
成田の驚きの表情を見ながらなんとなく…
マジで今日は初めてなくらいコイツの笑い顔以外を見てるな、と思ってなんか不思議な気持ちになった。
「実はね…部室で乱闘しようとしてたら加賀さんがきてさ。俺、飲み物買いに行かされてたんだよね。」
「は?なんで加賀さん…」
「ウチの部の主将だから。」
「はっ!?」
俺の知ってる加賀さんは…明らかに日サロで焼いてるチックな肌の色に明るい茶髪のチャラ男。
まさかそんな人が……?
「なんで!?あんなチャラ男が試合とか出れんの!?」
「いやいや…主将ってのは影のって意味らしい。なんかまとめ役的なかんじっぽかったな。」
「…それでまさか…俺の名前が出たからその上級生共を加賀さんが成敗してくれた…とか?」
「多分ね。」
言い終わって同時に黙る。
……結果的に。
今日と前回のバスケ部の件は今後一切、俺にかかわらないってのを奴らに誓わせて一応の決着がついた。
先生に目をつけられた奴らはもう成田に手は出せないだろう。
初日に乱闘騒ぎを起こしてブラックリストに載ってた成田もこの内容がちゃんと生徒指導の先生に伝わったおかげでお咎めナシの真っ白、まっさらに戻った。
なんかいいことばっかだな。
そう思いながら腕を組んでウンウンと頷いてると。
グッ。
いきなり腕が掴まれ引かれて立ち上がらせられた。
「んだよテメェ…」
「今日は父さん、出張で帰って来ないんだよね。」
「…だからなんだ。」
「だからさ…」
見慣れたヤツの、いやに大人びた知らない顔が近付いてきて…
「けい……っいてて!」
「ドアホ。調子に乗んな。」
その頬を抓って捻じり上げてやった。
「いって!マジいてーっ!」
「痛くしてんだから当たり前だ。…ったく懲りねぇな。」
赤くなった頬を涙目でさすってる成田はいつもの成田だ。
安心した俺はヤツに食後の片付けと明日の朝の飯炊きを命じて一人自室に戻った。
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