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16(藤隠side)にしおりをはさみました!
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16(藤隠side)
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血に染まった心隠を見て、俺は声を絞り出した。
「し、おん?どうしたんだよ…。傷口が開いたのか?せっかく着替えたのに…また汚して。替えの着物があったから取って来てやる。でも、一度身体も洗わなきゃダメだな。俺が着物を取りに行ってる間に、風呂に入れよ…」
俺の声が面白いくらいに震えている。心隠を起こそうと、心隠の身体を揺する手も、小刻みに震えている。
ーーなんでだ?寒いのか?え?だって今は夏だぞ?ここが山奥だとしても、震えるほど寒いわけない。風邪か?鬼の俺が?
とりあえず着替えを取って来ようと立ち上がりかけた俺の手に、冷たいものが触れた。
それは、俺の手を握ろうとして伸ばした心隠の手だった。その手が、俺の手を握らずに、力無くパタリと落ちる。
慌てて心隠の顔を覗き込むと、口が微かに動いている。
「なにっ?何かあるなら言ってくれっ。目が痛むのか?もう少し鎮痛剤飲むか?それとも腹が減ったか?ここの冷蔵庫に食材を入れてある。何か作ってやるよ。それよりも早く風呂に…。あ、そうか。目が見えねーんじゃ、風呂に入りづらいよな。ごめん、気づかなかった。じゃあ俺が風呂に入れてやるから、とりあえず起きろ…」
早口でまくしたてる俺を止めるように、「藤隠」と心隠が呼んだ。
「いい…もう、いいんだ…。藤隠…、何も、して…やれなくて…ごめん、な…。おまえ、を…一人…に、して、ごめん…な…。俺、みたい、に…なるな。藤隠…幸せに、な…」
「う、うるさいっ。何言ってやがる!謝んな!お、俺はっ、あんたにいっぱい可愛がってもらったっ。強くて綺麗なあんたは、俺の憧れでっ!おかしくなったのだって、母さんの為じゃないかっ!あんたが生きて傍にいてくれたらそれでいいからっ。ほらっ、つまんねぇこと言ってないで、早く風呂に…」
俺の心臓が凍りつく。
心隠から、音が聞こえない。息をする音も、血液が流れる音も、心臓が脈打つ音も。
俺は、心隠の手を握った。もともと体温が低かったけど、心隠の手は氷のように冷たくなっていた。
「いっ、嫌だっ!俺を一人にするなよっ!教えて欲しいこともあったのにっ!なんだよっ、逃げるなよっ。生きて、罪を償えよっ、バカしおんっ!うわーっ!!」
俺は心隠の身体にすがりついて、いつまでも叫び続けた。
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