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テツ!にしおりをはさみました!
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テツ!
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嘘だ。
最初に思ったことは、それ。
今日は、桐皇が秀徳と練習試合するってんで、久々に桐皇に来ていたのだ。
しかし、俺は相手の選手の一人を見て、そう思った。
だって、そう思うだろ?
死んだはずの大事な奴にそっくりな奴が、失ったときとそっくりな姿でバスケしている。
信じられるはずがない。
けど、何度目を擦っても、
何度目を凝らしても、
どう見ても、テツにしか見えなかった。
嬉しくなった。
あいつが帰って来たんじゃないかって、嬉しくなったんだ。
けど、そんなはずはない。
あいつは死んだんだ。
でも、テツにそっくりなあいつは、一体誰なのだろう。
あの技も、テツのものだ。
もしかしたら、高尾が教えたのかもしれない。
しかし、それにしては精度が良すぎる。
まるで、あいつそのもののような。
そんなはずはないのに、そう思えてくる。
気になっていたら、高尾の声が聞こえた。
「今日はよく頑張った! 特に黒子! おまえがいなかったら危なかっただろう。おまえらも、黒子を見習って独自の強さを磨け! 大丈夫。おまえらなら出来る!」
「くろ……こ……?」
息が、詰まった。
高尾はいま、『くろこ』と言った。
嘘だ。
テツはもう帰ってこない。
わかってる。
だから、あいつは同性同名のそっくりさんなんだ。
そう、納得させようとした。
けど、納得なんて、出来なかった。
俺は、高尾を待ち伏せて、話を聞くことにした。
高尾は酷く驚いた顔をして、生徒を返したあと、あのテツのそっくりさんと共に、俺についてきた。
近くにあった公園のバスケットコートの中。
落ちていたボールを投げると、シュートが決まる。
高尾に問うと、高尾はあたふたして、不審なくらいに顔が引き攣っていた。
戻ってきたボールを人差し指で回しながら、高尾にもう一度問う。
すると、高尾になにかを言い、テツのそっくりさんが出てきた。
そして、言ったんだ。
「お久しぶりです。青峰くん」
その言葉に、俺の心が震えた。
「テ……ツ……?」
「そうです。随分と大人びましたね。中身はアホ峰のままのようですが」
声も、喋り方も、テツだった。
そして、心が叫んでる。
こいつはテツだ、と。
でも、信じきれなくて、
「ホントに……テツ、なのか?」
と聞いてしまう。
すると、昔と変わらない無表情で、テツは言った。
「仮にも元相棒で元恋人であるのに、なに言ってんですか、まったく」
それは決定打だった。
テツが帰ってきた。
失った大事な奴が、帰って来たんだ。
知らない内に、涙が流れた。
「テツ……。テツ!」
そして、とっさに抱きしめていた。
「テツ。テツ。テツ!」
「五月蝿いし、痛いです」
そういうのも、昔と変わらない。
嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
ギュッと抱きしめる。
すると、テツは昔のように頭を優しく撫でてくれた。
俺が落ち込んだとき、
俺が疲れて甘えたとき、
いつもテツは最初は嫌がるくせに、最後は撫でてくれた。
あぁ、テツだ。
テツなんだ。
嬉しくて、俺は高尾の変化に気づかなかったんだ。
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