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キセキ再会編 12にしおりをはさみました!
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キセキ再会編 12
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僕が話しを終えると、みなさんは黙り込みます。
「信じていただかなくてもいいですよ」
「いや、信じてないわけじゃ……」
氷室さんがそう言いますが、僕は遮ります。
「僕だって、いまだに夢だったんじゃないかと思いますから」
そう言うと、氷室さんは黙ります。
他のみなさんもです。
僕自身、言葉がありません。
最初の頃。
記憶がまだ完全じゃなく、夢として現れていました。
当時はまだ幼く、夢を見る度に親の布団に潜り込みました。
バスケをするのが怖くなったこともあります。
裏切られるんじゃないか、とか。
死んじゃうのではないか、とか。
夢が怖くて、現実ですら怖くなって、震えるしかない日もあった。
それでも、夢で見た約束が、僕に前を向かせた。
高尾くんに会いたい。
もう、いないかもしれない。
もう、僕のことを覚えていないかもしれない。
もう、誰かと結婚して、子供までいるかもしれない。
僕がいたら、邪魔かもしれない。
でも。
それでも。
ひと目でいいから。
たった一度、お帰りと笑ってさえくれれば。
それで、十分だから。
高尾くんに、もっと早く会いたかった、と言われたとき、
僕は、決めていたからだと返した。
確かに、決めていた。
けれど、自分の思う『もし』が当たっていたらと思うと、怖かった。
怖くて、決めることで逃げていたのだろう。
だから、再会したあの日は、いまにも走って逃げてしまいそうだった。
震える体を必死に抑えて、僕は体育館に入って、高尾くんを見た。
口ぱくで、震えそうになりながらも、ただいま、って言った。
そうしたら、すごい嬉しそうな顔で笑って、お帰り、テッちゃん、って。
いまでも、あのときのことは忘れない。
「夢じゃないんだろう?」
笠松さんが僕に問いました。
もちろんです。
「夢だったら、僕はいま、こんな風に笑ってたりしませんよ。幸せだから、笑えるんです」
にこりと笑う。
幸せじゃないのなら、僕は笑ってなんていられない。
高尾くんという幸せがあるから、笑っていられるんですよ。
でも――――――、
――――――高尾くんはいま、幸せですか?
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