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18歳以上ですか?
???にしおりをはさみました!
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櫻井典子は、何十キロも離れた廃墟にいた。
携帯で、多田翔を襲わせた男達に指示を送っていたのだ。
しかし先程から、彼等の応答が無かった。
「もう、役立たず」と櫻井は呟いた。
すると、微かだが足音が聞こえたのだ。
櫻井は息を飲んだ。
こんな所に人は来ない筈だ。
しかし、いる。
砂を擦るような足音は、次第に近づいていった。
「だ、誰よ」
そのように尋ねたが、櫻井は既に悟っていた。
その存在が誰なのかということに。
もう目の前に、その男がいた。
その男は背中の方から、月明かりが照らされ、正面が暗かった。
しかし、目の光だけがやけに怪しく光っていた。
「やっぱり君だったんだ」
「…仲原くん」
仲原は上着のポケットの中から、そっと何かを取り出した。
それは、黒い精密機器のようなものだった。
「店のカウンター席の下に隠して設置していたね。盗聴器」
「どうしてそれを…?!」
「僕もよく使うからね」
目を凝らしてみると、仲原が持っている盗聴器は2つあった。
櫻井のものと、もう1つは仲原の所持品だった。
仲原は、櫻井のものをアスファルトの地面に落とすと、足で踏みつけた。
パキッと、割れる音が響いた。
「ようやく、キミのことを思い出したよ」
既に壊れた黒い機械を、これでもか、と地面に足で擦り付ける。
バキバキとその音は容赦無く響いた。
その行為には、2つの意味があった。
もう二度と使えないように、そしてある警告だった。
「キミは、プライドが高くて嫉妬深い女だった。よく翔ちゃんに嫉妬していたね。とても見苦しかった」
「…っ!」
櫻井が昔から恋い焦がれてきた男は、もうそこにはいなかった。
代わりに、冷徹な眼差しで彼女を見下す男がそこにいた。
「翔ちゃんの仕事に関わる人だったから、無下に出来なかったけど…、もう良いや。」
「も、もう良いって…何?」
手に入れたかった筈なのに、もうそんな男はどこにも居ない。
ただただ、おぞましい空気に包まれた男がいた。
「……害虫は駆除、しなきゃね」
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