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創世祭①にしおりをはさみました!
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創世祭①
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「カノル、今日は創世祭の準備をするよ。」
赤髪の使用人ゾンビは楽しそうにそう言った。
「創世祭ぃ?」
なんだか今日は使用人の皆が忙しそうにしていると思ったらこういう事か。
創世祭ってのは名前の通り世界が出来た日を祝う祭りだ。神の宿る木とされる針葉樹を装飾し、豪華な食事を用意して、プレゼントをあげたり貰ったりして、お祝いなんて言いつつなんやかんや楽しむ日だ。
小さい頃から貧しかった俺は、綺麗な飾りも豪華な食事もプレゼントも無縁だった。弟と妹にちょっとした物をあげた時もあったけど、よその家のように楽しむ事は出来なかった。
「ったく、屍人のくせに行事を楽しもうなんておちゃらけてるよな。そもそもなんの祭りか知ってんのかよ。」
俺が気だるそうにアリアに聞くと、彼女は手を顎に当てて首を傾げた。首の切れ目の糸が伸びているが今日は落ちることは無さそうだ。
「んー、何かの神様のお祭りだっけ?」
「しるかよ、ちゃんとしたことねーし。」
「じゃあカノルも初めての創世祭だね。」
確かにらしいお祝いをするのは初めてかもしれない。でも仕事で準備を手伝うのは良いけど、皆でわいわいするのはあまり得意ではない。
「ドストミウル様も喜ぶよ!」
まだ参加するとも言ってないのに、アリアは笑顔でそう答えた。
死の王もこんな事で浮かれたりするのだろうか、考え難くておれは苦い表情を変えられずにいた。
たちまち部屋は綺麗な装飾で飾られていった。
とはいえ装飾品も年季が入ったものが多く、蜘蛛の巣が付いたままだったり、誰のものか分からない骨の一部が混じっていたりする。
屋敷に入ってすぐの広間の中央にはメインの飾りとなる大きな針葉樹が立ち、使用人達が中心になり上から下まで様々な装飾が施されていた。
「うむ、今年もいい飾り付けだ。」
珍しくふらりと広間にでてきたドストミウルは飾りを見て頷いた。
「あ、旦那様。」
ヂャパスと共に飾りを付けていたダティアリアは主人を見て頭を下げた。
「ところでカノルを見かけなかったか。」
そう問われヂャパスは主に向き直った。
「あやつはいつもの掃除をすると言っておりましたが...まさか、見当たらないのならまたサボっているのでは!すぐに探してきましょう。」
「いや、かまわん。私が探そう。」
ドストミウルはヂャパスに手を向けると来た方向に飛び去って行った。
ドストミウルはカノルの好む場所をいくつか知っている。その場所の一つに彼は居た。
ドストミウルの部屋の前からさらに上へ上がると、カノルの為に作った弓の練習場がある。その前の廊下を進んだ先に、壁画のように大きな窓がある。半分以上割れてしまっており、窓としては役に立たってはいないが、夜空のよく見える大窓はカノルのお気に入りの場所の1つだ。
「カノル」
ドストミウルが視界の端に入るほど近づいてもカノルは窓の外を見ていて、ひとつもこちらを見ようとはしなかった。
「...アホみてぇ。」
カノルは不機嫌そうな顔をして仕事道具も持たず、窓枠に片膝を立てて座っていた。
「知りもしないやつのお祝いして浮かれて何が楽しいんだ。神様?プレゼント?豪華な食事?俺は何もいらない...神なんていもしねぇのに。」
感情のこもった悪態に引っかかるものを感じ、ドストミウルは不安を覚えて顔を覗き込もうとした。
「カノル」
ドストミウルが触れるほど近づくと初めてこちらを見た。
「頼まれたって参加しねーし、プレゼントも貰ってやらねぇぞ。」
カノルはいつも以上に不機嫌な顔でドストミウルを睨んでいた。
「おめでとうもありがとうも言わねぇかんな。あっち行けよ!」
カノルはこちらを睨むとこっちに来るなとばかりに蹴り飛ばしてきた。本気では無いものの、これでは近づけない。
「カノルやめなさい。分かった、分かったから。」
そうドストミウルがふためくとカノルは口を尖らせながら蹴るのを止めた。
今度はドストミウルが近づいても抵抗しようとはしなかった。
「私が...私がいつか君に死をプレゼントしよう」
ドストミウルはカノルを抱きしめるように体を寄せると、頬がつくほど顔を近づけた。
「そうしたら、私は君の神になれるだろうか?」
耳元でそう言うと、カノルは少しだけ口元を緩めた。
「はっ、んなもんただの死神じゃねーか。」
顔を離して視線を合わせる。
「少し部屋に行か...」
「行かねぇよ!何考えてんだこの変態!」
ドストミウルはまたカノルの蹴りをくらうことになった。
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