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死神先生、会合に呼ばれる【5】にしおりをはさみました!
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死神先生、会合に呼ばれる【5】
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一方その頃、死神先生と血まみれ先生は人外会議の会場に到着して会議の始まりを待っていた。
大きな楕円のテーブルは人間で言うと50人は座れるほどであり、それぞれ名前の入ったプレートが席に置いてあった。
「……」
「緊張されてますか?死神先生」
「…えぇ、まあ」
それもそのはずで、会議の参加者はちらちらと死神先生の方を見たり、小声で噂話をしている者もいるからだ。
たまたま隣の席となったブラッドがクスリと笑った。
「死神先生は飼い人に反対だったんですから。嫌に注目を集めるのも無理ありませんよ」
「……それだけなら良いのですが」
「………」
少しだけ悲しそうに俯く死神先生に、ブラッドは何と声を掛けて良いか分からず、静かに死神先生の横顔を見つめた。
「皆様、お集まりのようですので会議を始めさせて頂きます」
ざわつく会議室を一声で静めたのは、テーブルの1番奥にある席に座った背の高い女性だった。彼女の顔には舞踏会で使うような仮面が被さっていて、表情は勿論、何の種族かも分からない。
「それでは、第66回人外定例会議を始めます」
その場にいた全員が起立し、仮面の女に胸に手を当てて礼をする。
これは、裏の国での忠誠を誓うポーズである。
堂々とした態度で椅子に座る彼女の呼び名はレーヌ。裏の国の女王である。
「さて…」
忠誠の儀が終わり、着席した参加者はレーヌの言葉を待つ。
かつて、裏の国に追放された人外達は満身創痍であった。その人外をまとめ、今の秩序を作り上げたのがこのレーヌである。追放される前から彼女は上に立つことが多かったこともあり、今は圧倒的な信頼と裏切らない手腕で裏の国を豊かなものにしている。
そして、人外の中で最も人間を恨むのが彼女でもあった。
「今回もいつも通り、皆様が然るべき手続きを踏んで人間を飼っているか確認しましょう。これは、人飼いに関する仕事を円滑に進めるためのものです」
レーヌはさらに付け加えた。
「無論、しっかりと手続きをした上で、人間に何をしようが構いません。もし、飼った人に暴力を振るうことで気が晴れるのならいくらでも殴ると良い。自分の仕事を代わりにさせて、効率化が図れるなら永遠と仕事をさせれば良い。……つまり、国は推奨しているのです」
いつもの長い話が始まり、欠伸を必死に堪えるブラッドは横目で死神先生を見る。
死神先生は、怒りのこもった目でレーヌを見ていた。
「それともう1つ、飼った人には最後まで責任を持ってくださいね。死んでも道に捨てるということはないように。掃除が大変ですから」
ガタンと机を叩く音が会議室に響いた。
「…おや、あなたがこの会議に出席するだなんて、明日はキャンディでも降るのかしら。何か言いたいことでもあるの?」
音を立てて立ち上がったのは死神先生だった。ブラッドは眉間を押さえてため息をつく。
死神先生は異議を唱えようと口を開くが、ブラッドに服の袖を引っ張られ、我に返る。
「…いえ、失礼しました」
「なら良いわ。…他に何か言いたいことがある者はここで挙手をなさってください」
誰も手を挙げる者はいなかった。
「時間短縮で大変よろしいですね。……少し早いですがお開きにしましょう。全員、必ず出席表を提出してからお帰りください」
レーヌが椅子から立ち上がる。後に続いて一同起立し、忠誠の儀を行う。
レーヌが会議室を出ていくと、場の緊張感が解れるのを感じた。
会議室がざわつきを取り戻し、解散の空気となる。
「死神先生」
「…すみません。体が勝手に」
「いえ、何事も無かったので良かったですよ」
「…………っ!」
「…死神先生?」
突然、座り込んだ死神先生の顔をブラッドが覗き込むと、死神先生は目を見開いて口を抑えていた。小さく震えている。
「大丈夫ですか?!」
「…大丈夫、です」
死神先生は鞄からカプセル剤を取り出すと、口の中に放り込んだ。しばらく荒い呼吸をしていたが、やがて落ち着きを取り戻す。
「…まだ、その薬飲んでたんですか?」
「飲まないと、制御できないですから。うっかり、朝飲み忘れてしまいました」
「…“発情期”って薬で抑えても辛いだけでしょう」
ブラッドは呆れたように言った。死神先生は誤魔化すように、曖昧な笑みを浮かべた。
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