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55
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「……アリエル様っ…」
ガタガタと震えるアリエル様に、そっと近寄る。
「ディランでございます。もう、大丈夫です。」
「っ、ふるえ、とまんなっ、い……どうしよっ、どうしようっ……」
ボロボロ泣きながら、俺に震える手を伸ばすアリエル様。
見ていられず、思わず抱きしめた。
「少しだけ、お許しください。」
「ーっ……ディランっ……こわ、っ、た、こわかった……」
「……すぐに帰りましょう。」
「ん、んっ……」
コク、と頷いたのを見て、男達は護衛に任せ、アリエル様を優しく抱き上げる。
「ディラン!」
カイ執事長の声にも、アリエル様はビクリと震えた。
「心配いりません、カイ執事長です。」
「っ、アリエル様っ……」
「少し、取り乱されています。すぐに城に。」
「ええ、そうしましょう。怪我をしていたらと思い、馬車を手配しています。ディランはアリエル様と一緒に乗ってください。」
「わかりました。」
馬車に乗り込んでもなお、アリエル様の震えは止まらなかった。
「アリエル様、もう大丈夫ですよ。私が傍におります。きちんとお守り致します。」
「……うん、わかってる……わかってるっ、けど……」
はだけた服から覗く肌には、擦り傷がついている。
「城に戻りましたら、入浴いたしましょう。それからお着替えをなさって、ゆっくりお休みになりましょう。その間、私はずっと傍におります。」
「……うん…」
城にはすぐに到着した。
「アリエル様、エリック様を呼んでまいりますので……」
「やだ!」
「……っ、アリエル様……?」
「……やだ……だめっ……見られたく、ないっ……」
「しかし……」
あまりに震えるアリエル様に、カイ執事長は眉を下げる。
「アデル……アデルバートを呼んで……」
「かしこまりました。すぐに呼んで参ります。アデルバート様がいらっしゃるまで、お部屋でお休みください。大丈夫です。」
にこりと微笑んだカイに、アリエル様はほっとしたのか、少しだけ力を抜いた。
カイ執事長とは別れ、アリエル様の部屋に戻る。
備え付けの風呂に入り、丁寧に体の汚れを落とす。
手が震えてシャワーも持てないような状態のアリエル様に、心がズキズキと痛んだ。
入浴を済ませた後、ベッドに入ってもなお、アリエル様はカタカタと震えていた。
俺はその手を握ることくらいしかできない。
「……ディランっ…そばに、いる?」
「はい、ここにおります。」
「サンディー、は、どこ?」
「今はキャンディと遊んでいるかと……連れて参りましょうか?」
「っ、いかないでっ……あとで……あとでつれてきて……」
「かしこまりました。」
アリエル様がポロリと零した涙は、氷の結晶に変わった。
まだ、限界を超えた恐怖に襲われていることを、表していた。
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