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守護する者たち 16にしおりをはさみました!
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守護する者たち 16
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「アキラっ!無事か‼︎」
「セベク!」
セベクはアキラの声を聞き一応安心したようだ。
しかしその矛先は怒りと共に全てアビスに向かう。
「どういうことだ?これは。
なんでお前獣化してた?」
常人ならば立っていられないほどの怒りのオーラが流れ出す。
すでにアキラは涙を流しガタガタ震えている。
「アビス!お前まさか。」
セテフが口を挟んだ。
「ああ、叔父上。そのまさか、さ。
俺はアキラに種付けした。
仔が出来るかもな。」
この一言はセベクの怒りには火に油を注ぎ、セテフは絶句した。
『アキラ殿は男だ。本来なら仔が出来るなどあり得ない。
あり得ないがしかし、アキラ殿は天人だ。
ひょっとすると可能なのか?」
セテフは振り返ってアキラを見た。
真っ青な顔色で震えている。
身体も辛かろう。
一族の女でも種付けの後は臥せるという。
それを番が優しく見守るのだ。
しかしアキラの番は今…
セテフは意識を二人の方へ戻した。
物凄い殺気に包まれた二人。
“始まり”の機会を図っているのか?
では私はその気を一旦削ごう。
甥を落ち着かせる為に。
「アビス!これを!」
セテフは持っていた長槍をアビスに向かって投げた。
セベクへの視線を外しもせずにキャッチしたそれを頭上で数回転させ左右に2、3度振った。
一連の所作は武舞のように美しい。
アキラは思わず見惚れてしまった。
セベクからは尾が出ていてそれがゆらゆらと揺れていた。
アビスの、槍の穂先を前に傾けて小脇に挟み、セベクを捉える目は先程迄とは違う強さが宿っていて。
「参る。」と。
ヒュンと音をたててセベクの尾が掠める。
飛び退さってかわすと尾を退くタイミングで攻撃を仕掛ける。
しかし長槍を持ってしても間合いを詰めるのは難しく、近接戦に持ち込まなければ分の無いアビスには不利な闘いだった。
アビスは勿論全力で、セベクも9割がたの力で闘っている。
セベクに酒が入っているのを抜きにしてもアビスのこの腕前は称賛に値する。
一方、セテフはワクワクする心を抑えながらこの闘いを観戦していた。
『アビス。私の最高傑作が今、鰐王セベクと互角に闘っている。』
「橡のアビス。」
セベクの低い声が響く。
「お互い埒が明かない。長得物を捨ててナイフで勝負しないか?」
鰐王の真意は図りかねたがアビスに否はない。
長槍を捨てると背中からナイフを抜いた。
セベクも尾を終うとアビスよりやや小振りのナイフを抜く。
アキラから声にならない悲鳴が漏れた。
いつの間にか敷布を巻き付けただけのしどけない姿でセテフの傍らにやって来ていた。
「絶対に飛び出したら駄目ですよ。」
セテフに釘を刺されて渋々頷く。
アビスが立てていた刃を寝かせた。
それが合図となった。
刃と刃が合わされそして離れる。
二人とも無駄な動きは一切ない。
何度目かの当たりの時、火花が散って欠けた破片がアビスの頬とセベクの腕を掠った。
一瞬怯んだ隙をアビスは見逃さずその得物の切っ先が胸を掠める。
「いやーっ!止めて、止めて、止めて!じゃなきゃ嫌いになるよっ!」
二人の動きがピタリと止んだ。
アビスが刃を返して手前に引く。
セベクも鞘に納めていた。
アキラの身体が崩れ落ちる。
「‼︎」
「アキラ!」
セテフが気づいて事なきを得た。
そうでなければ地面に叩き付けられていただろう。
「ばか。ばか。うわーん」
セテフの腕に抱かれて大泣きを始めたアキラの元に二人が駆け寄って来た。
二人の足にしがみついて泣きじゃくるアキラ。
「なんで喧嘩なんかするの~!
あ~ん」
喧嘩。
そんな生易しいものじゃない。
二人は正真正銘殺し合った。
セベクは途中からアビスの力量を図っていたが。
「ごめんな。さ、こっち来い。」
アビスが抱き上げようとすると、セベクが横から抱き寄せようとする。
二人はまた睨み合った。
また、殺し合いが始まりそうな雰囲気だ。
「そこまで!」
セテフの怒った顔。
彼は二人を押し退けてアキラを抱き上げた。
「私が連れて行きます。
いい加減休ませなければ。
あなたたちは付いて来ないで下さい。」
ピシャリと言い捨てると踵を返して部屋へ入って行った。
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