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94
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「じゃあまた、学校でね」
「今日はありがとう。結城くん、またね」
「…お、おー。またな」
学校では帰り際にそんな風に声を掛けられることなんてなかったから、ちょっと戸惑ってしまう。
大人数のグループも少しずつ人が減って、やがて俺と有坂だけが残る。
有坂は当たり前のように俺を家まで送ってくれて、二人で電車を降りて夜道を歩く。
「少し遅くなってしまったな。結城の親が心配していないといいが」
「まだ全然遅くないだろ。国民アニメもやってる時間だぞ」
「そうか」
アニメとか絶対有坂は見なそうだが、いつも通りそう言って俺を見つめる。
今日はもうずっと優しげな視線を向けられていて、ドキドキして堪らない。
だけどそれに浸る暇も無く、すぐ家に着いてしまう。
「また学校で」
有坂は少しも俺には触らずに、すぐにその言葉を言う。
胸がツキンと痛んで、ものすごく寂しくなる。
まだ一緒にいたい。
ずっとそばにいてくれたけど、全然足りない。
慌てて有坂の腕を掴む。
「なあ、ちょっと俺んち寄ってけよ。いいだろ」
「いや、さすがにこの時間に邪魔しては失礼になる」
「大丈夫だって。俺が言えば親はなんでも喜んでるし、失礼とかねーって――」
「そうはいかない」
有坂は表情を変えずにぴしゃりとそう言う。
さっきまでずっと甘やかしてくれたのに、なんでそれはダメなんだ。
有坂はいつもそうだ。
余韻も何もなくすぐ帰ろうとする。
俺の事一生愛してるって言ったくせに、もっと俺といたいとか思わないのかよ。
しかも今日は色々あって有坂と分かりあったりもしたから、余計にまだ離れたくない。
「ちょ、ちょっとくらいいいだろ。まだそんな遅くないし…」
「いや、今日はやめておく。また明日、学校で」
有坂は淡々とそう言って俺に背を向ける。
あまりにあっさりとした態度に胸がギュッと苦しくなる。
有坂が行ってしまう。
そんな風にそっけなくしないでほしい。
もっとたくさん触って、可愛がって欲しい。
「い、嫌だ。離れたくない。まだ一緒にいたい」
思わず有坂の背に手を伸ばして、その服を引っ張る。
振り向いた有坂と視線が合って、不意にその瞳が切なげに歪んだ。
――瞬間、物凄い勢いでがばりと引き寄せられる。
何が起きたのか一瞬分からなかったが、すぐに全身を包み込む感触に抱きしめられていることを知る。
まるでずっと我慢していたというように、力強い腕がしっかりと俺の身体を抱き込んでいる。
「…すまないが今日はあまり自制が効きそうにない。少し頭を冷やしたいんだ」
すぐ耳元で熱っぽい有坂の声が聞こえて、バクリと心臓が跳ねる。
こんな風に耳に吐息が掛かるほど近くで抱きしめられたのは、いつぶりだろう。
久しぶりの有坂の匂いに頭がくらりとする。
ずっと、ずっと触って欲しくて堪らなかった。
「…お、俺も頭が熱い」
「――え?」
胸に頬を寄せながら、ぼんやりと呟く。
もうずっと熱くて、頭の芯が焼けてしまいそうだ。
有坂の身体が少し強張ったような気がしたが、構わずその胸に頬を擦り付ける。
「俺も熱いから…ひ、冷やさなくていいから。まだ一緒にいたい」
「結城、それは――」
有坂が少し驚いたように俺の顔を見下ろす。
久しぶりの有坂の体温は酷く熱くて、だけど心地良い。
ぼーっとする頭で、そっと俺は口を開いた。
「…有坂。可愛がって」
自室に入った途端、有坂に勢いよく身体を引き寄せられた。
家に上がった時は普通に行儀よく「お邪魔します」って言ってちゃんと靴も揃えて俺の親にまで挨拶したのに、部屋に入ったらまるで別人のように強引に身体を抱きしめられる。
こんな有坂は初めてだ。
だけど俺も有坂に触って欲しくて堪らなくて、その背に手を回して温もりを確かめる。
「…結城、ちゃんと意味を分かって言っているのか」
すぐ近くで有坂の声を聞きながら、ぼんやりとその瞳を見つめる。
何も言わず熱に浮かされたように黒い瞳に見惚れていたら、不意に目元にキスされた。
愛しむように瞼からこめかみへ唇が滑り、額、鼻、頬へ有坂は順番に唇を落としていく。
すぐ口の横にもキスされて、顎にもキスされる。
それからもう一度俺の目を覗き込む。
次にどこにキスしようとしてるのかは、俺だって分かる。
「――わっ」
不意に身体を持ち上げられた。
有坂にお姫様抱っこで抱えあげられて、すぐ側の自分のベッドへと連れてかれる。
床に散らばっている色んなものを有坂が煩わしそうに避けながら、そっとベッドに俺を落とす。
いつもだったら俺の部屋を見た瞬間に絶対片付け始めそうなのに、今はそれより俺を優先してくれるらしい。
ベッドにたくさん乗せていた服が皺になるのも気にせず、有坂もベッドに乗り上げてくる。
上から近い距離でじっと目を見つめられて、どうしようもなく体温が上がる。
「…俺はもうお前を泣かせたくはない。間違っているなら今すぐ言ってくれ」
そう言った有坂の視線は酷く熱くて、もし嫌だって言っても離してくれる気なんてなさそうだ。
だけど待ってくれている。
求めるような強い視線が、じっと耐えるように俺の目を見つめている。
――きっとこれに頷いたら、有坂にキスされてしまう。
いつもは有坂が無理やり俺にしてきたから、自分から強請ったことは一度もない。
有坂とは親友でいたい。
だけど、求める気持ちも止まらない。
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