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俺が俺である為に。1にしおりをはさみました!
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俺が俺である為に。1
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男と女どちらが好きですか?と聞かれれば、異性を答えるのが一般常識である。
しかし、好きにも複数の意味がある。
ただの恋情からくるものだけでなく、母親のような愛情からなのか、はたまた少年漫画のような友情からなのか…多岐にわたるものから1つの意味を見出し、次の言葉に繋げる。
これほど、面倒な事はないだろう…本当にそう思う。
「LikeとLoveの使い方ァァァァァ!!!」
休日の朝。
いつものリビング。
いつものソファ。
いつもの定位置。
そして、いつもと違うテレビの映像。
四角い箱の中で幼い顔立ちの高校生が気になってる元々仲の良かった女子のクラスメイトに告白をした。…まぁ、彼女は反応は言うまでもなく酷いものだったが。
イマドキの恋愛ドラマは簡単な勘違いしか生み出せんのかね、純情な高校生が主人公とはいえ現役生からはただの童貞にしか見えねぇ。
リモコンで肩を叩きながらソファに深く座る。
黒川家という一般的な家庭で育ち、千佳という名前を自覚して今日までを生きてきた。高校に入学し早1年になるが、あいも変わらず冷たい奴だと言われる。
中学生とは違った価値観を持つようになり一般常識という堅苦しいものまで知らなければいけなくなった時期に突入していると認識してる時点でもう手遅れだと言われたのが極最近の事である。
冷たい訳じゃない、俺はあくまでこういう時期だと思ってるだけだからな。
『冷たくて面白い事が言えない男子高校生が恋愛なんて出来る訳ない!だから、俺が先に恋人作れる…!』
天に祈るかのように羨望の目で空を仰いでいた友人である根間が言っていた言葉だ。
…ムカついた。好きでこんな性格をやってる訳ではないし、恐らく先天性の性格である以上仕方がないのである。
しかし、人に冷たく接してしまうのには興味がないというか魅力を感じないというか。結構複雑な領域での話である為に困りかねていた時に見つけたのがこのドラマである。
中身はまぁ酷いものだったし、ちっとも人の恋愛について分からないがこれだけは分かる。
「根間め…!いつかメッタメッタのギッタキッタにするからな!あの言葉訂正させてやる!」
「まだ、ガキぽっい言葉使うのね。」
天井を仰ぐように視線を斜め上に移すとそこには見慣れた女が短めの髪を無理やりおさげにし、ノースリーブと短パンというまぁ腑抜けた格好をしてる。
「暑くもねぇーのにその格好は女子大生にあっていいものなのか?」
「ガキに言われたくないから。女はね、オンとオフを大切にするの。1歩外に出ればそこは戦場。家でぐらい休戦させなさいっての。」
どうやら、リビングと併設されているキッチンでミルク多めのコーヒー(もはや、カフェオレであるが本人は認めてない)を注ぎにきたらしい。最もらしい事を言ってるが、要はだらけたいだけである。
「あんたさ、彼女とか作らない訳?」
俺が滅多に観ることない恋愛ドラマを観てたからだろうか、何気ない質問のように聞いてきた。そして俺の隣に座った。自称コーヒーを啜りつつ俺の返答を待ってるようだが、そんなの決まってる。
「興味ねぇーよ。今は、どうでもいいんだって。」
決まり文句のようなこの台詞。この姉はやたら最近恋愛絡みの話を俺に持ってくる。そろそろイラついてきているのを察する事がなく言ってくるのだがらかなり図太い奴である。いつもはその手の話に興味がないと言うと軽く舌打ちをして帰って行く。俺の日常がまたいつものように流れていくのだ。
いつもの。
いつものペースで。
いつもの悪態を吐く姉。
いつもの──
「もしかして、男にしか興味ないとか?」
「は?」
真っ白になった。
何を言ってるのだ、この女は。
まさか、あのドラマのせいか?
髪を縛るゴムか外れそうな勢いで彼女は顔を横に素早く振り自分の感情を鎮めながらも続ける。
「きゃー、もう。あんたって隅に置けない奴ね。この界隈の天才児と言われる私にどーんと相談しなさいよね!」
姉は中学生の頃から同性愛(主にBL)の同人誌に手を出し、イラストから小説まで大体のものを自分から生み出してる。ハンドルネームとか細かい内容は知らないが″天才児″というのは多分自称であろう。
そんな彼女が変な方向に俺を導こうとしている。
「……。」
俺は一人暴走する姉から離れるように部屋を後にしようとした。が、魔の手から逃れられなかった。餌を見つけた動物は自分が満足するまでご飯を食べるように、彼女にとって俺が餌のようにしか見えてないのだろう。
これからの出来事に引き金を引く事も知らずに。
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