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俺が俺である為に。2にしおりをはさみました!
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俺が俺である為に。2
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姉は俺の話を聞いてくれなかった。
聞くつもりがないのは最初から分かりきっていた。そう、分かりきっていたさ。だから姉を止めなかった。どうせ、俺にBLの趣味を押し付けその素晴らしさについて話したり肉体美の美しさ(姉はゴリゴリのマッチョの男子が好きである)を伝えて、俺のさらに興味を増そうとする行動をするだろうと過信していた。幾度と、繰り返して来た行為だ、そう思うのは必然的だろう。間違ってない…間違ってない…間違ってない…!
「間違ってないからなぁぁぁぁ!?」
「あんた叫ぶの好きね、嫌いじゃないけど。」
黒の生地にテキトーな単語を並べたTシャツに着慣れたジーンズ。首には小さな十字架のネックレス、そして目の前の鏡。そこに見えるのは無気力な俺と髪型を整えようと軽くクリームを付けていく姉の姿である。
何でこんな服着せられてるんだろう、どこかに行かせる為…だよな。おつかいだとしても綺麗過ぎるよな…。
まじまじと鏡に映る自分を見ていた。
俺は鏡が嫌いだ。
自分の顔を見る行為が好きではないという単純理由もあるが、鏡は映る自分が凡人だと思わせてしまうからだ。かっこよく魅せる技やら男子でもやるように時代になったメイク術やらが出来てない事を知らせてくる。俺が現実というつまらない世界生きてるのだと自覚させる。
よく冷たいだとかノリが悪いだとか言われ、リアリストと卑下された男がつまらない世界を嫌ってるとは誰も思わないだろう。
楽しい事は人一倍好きだと自負してるし、今でも近所の公園ではしゃいで鬼ごっことかやりたいし。俺は別に馬鹿にしてる訳でもないのに何で変に受け取られるのだろうか。
はぁ…関係ない事まで考えるの本当にやめたい。だから嫌いなんだよなぁ、鏡。
思いにふけるのやめ、髪を整えを終えそうな姉に話し掛けてみる。
「なぁ…俺にこれから何をさせる気だ?」
「あー、とある子に会って貰おうかなって。私の後輩らしいんだけど…私も面識ないから分かんない。けど、丁度ちーちゃんの同級生とは聞いてるから安心して!」
「ちーちゃんはやめろって言ってるだろ。」
ちーちゃん。
幼い頃は千佳という名前では呼ばれた事がなく、この名前で呼ばれていた。両親と姉、そして根間は未だにこのあだ名で呼ぶ。流石に根間は呼ぶことは最近なくなりたまに呼ぶ程度だが、うちの家族はそうもいかない。
「何でぇー?可愛いじゃん!」
「…そうかよ。」
俺が子供だからなのだろうか。いつの日からかその名前で呼ばれると背筋がゾクッとし何とも言えない恐怖を覚えるのだ。最近は和らいできたが、思春期的にちーちゃんはもう卒業したい。
「んで、何で俺が会いにいかないといけないの?」
「あぁ、それはね…」
姉は重い口を開くように苦笑いを浮かべ俺に言った。
「私の通ってた学校男子多いのは知ってるよね?」
姉の母校はここ近辺では唯一の工業高校であり、必然的に男子が集まりやすくなっている。就職希望、専門職に就きたい学生は特にその学校に行くしかないのである。姉はデザイン系を志望し就職をメインに考えてた為にその高校に入学したらしい。
「その子、私の母校の在校生なの。それでね、私って…ほら!色んなネタ書いてるじゃん、私のネタは鮮度とかリアルさとかが売りなのね。妄想では書けない繊細さは人の心を動かすのよ!だから、その───ね?」
長ったらしい説明に要点が定まってない彼女。これには聞き覚えがある。俺は静かに姉に告げる。
「簡潔にどうぞ。」
「リアルの男子高校生とデートしてきてくださいっ!」
姉の甲高い声が部屋中に響いた。鏡を通して姉が頭を下げている事がわかる。俺の整った私服に好青年に見える髪型。そして、デート。そこから連想させられるのは勝負服という単語。俺は全てに合点がいった。
「死ね。」
俺は今の感情を凝縮しぶつける。
何に言ってるんだ!この人は!!!
「ねぇ!?酷くない?返事じゃなくて暴言って!お願いよぉ〜、お姉ちゃんの頼み聞いて!」
「断れ…!今すぐに!何で俺は知らない人に初デートを捧げないといけないんだぁ!」
俺は振り向き、姉と向き合う。俺は姉より身長が高いがそれは微々たるものであり、姉の身長の高さが伺える。そんな姉はいつものような調子で、
「初デートの処女を奪われる…?はっ!キタコレ!覚醒の音っ!書かなくちゃ!」
「おい、コラ!バカ姉!変な所に反応するなっ!」
「あんた、バカ姉って!最近、私の名前呼ばない癖に、バカって何よ!バカって!」
自分の世界から一気に引き戻すような事を言ったのが癪だったのか、姉は怒りの色を出す。
「そこには反応するのかよ!?都合のいい耳持ちやがって!」
「は。悪いかしら?女はね、自分の都合最優先よ。大体、3つ上の姉の言うことは聞きなさいよ!」
「なんだと────!」
俺は拳握りかけたが、すぐにその力は失われた。
ピーポーン ピーポーン
インターホンが鳴った。
殴り掛かろうとした俺を宥めるように。
テレビからなった効果音のようなベル音ではなく、この家の中心から鳴ってるような音。
玄関越しに小さい声だが微かに聞こえた、男性の声。
「すいません、黒川さんのお宅ですか。僕、りゅーって言うんですけど。誰かいませんか?」
これはフラグ…?
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