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探偵事務所の名刺にしおりをはさみました!
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探偵事務所の名刺
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ラボを訪れ、応接室で黒羽を待っていた。
今日は、【遮断マスク】の最新版を取りに来た。
外出時は、常に【遮断マスク】を着用している。
フルオーダーで作られる最新の【遮断マスク】は、見た目は普通のマスクと変わらないが、顔との隙間が極限まで少なくなっている。
Ωのフェロモンは、ほぼ完全に遮断できる。
ふと、ポケットの中の名刺を思い出した。
それを引き摺りだし、瞳を据える。
那須田に渡されたそれは、『犬養 艶 探偵事務所』のものだ。
人探しや素行調査をメインとする事務所らしい。
必要のないものだからと那須田が譲り受けたらしい。
ここで冬峰の素行調査を頼んではどうかと那須田が、提案してきていた。
冬峰の行動範囲がわかれば、出会う確率も下げられるのではないか、と。
運命は、変えられない。
抗ったところで、何もならないのかもしれない。
だけど俺は、抗い足掻く。
でも、こちらから行動を起こせば、余計に、冬峰との接点が生まれそうで、俺は那須田の提案に乗ることを躊躇っていた。
――コンコン
小さなノック音が応接室に響いた。
「はい」
俺の返答に、扉が小さく開いた。
「こんにちは」
扉の先から顔を出した妃羅は、胸許にタブレットと小さな包みを抱えていた。
妃羅は、黒羽の妹だ。
パステルカラーのカーディガンを羽織り、ふんわりとしたフレアスカート姿で、首許には見慣れない若草色のスカーフを巻いていた。
全体的に、柔らかな雰囲気を持つ妃羅。
今でこそ、笑えるようになったが、2年前、ろくでもないαに引っ掛かり、そのショックから脱け殻のようになっていた。
その時期の記憶は曖昧で、思い出せないらしい。
妃羅を溺愛している黒羽は、自分の保護下に置き、その時期に関するあらゆる事柄から遠ざけていた。
黒羽が先回りし、妃羅の記憶を封じているようにも思えた。
「ごめんなさい。兄さん、急用で出掛けちゃったの」
きゅっと眉間に皺を寄せ、眉尻を下げる。
飼い犬の悪戯に、呆れながらも叱れない、そんな雰囲気だ。
「それ、新しいヤツか?」
妃羅の首許に巻かれているスカーフに視線を向けた。
「そうなの。でもね、まだまだみたい。発情期の時は、これをつけてても外には出してくれないの」
妃羅の困惑の笑みが、深くなる。
過保護な兄に、手を焼いている感が否めない。
【防散スカーフ】は開発を始めてから2年が経つ。
だが、まだまだ改良の余地がありそうだ。
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