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高い雪にしおりをはさみました!
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高い雪
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「なんで!完成してるんだよ、お前は完成してるんだよ、なんで、完成してるんだよ、お前はなんで完成してるんだよ、お前はなんで完成してるんだよお前はなんで完成してるんだよ」
雪。
高い高い場所から、見下ろすように落ちてくる雪。
ばらばら、ばらばら、バラバラに、バラバラになる。
バラバラになって、なって、なって、細かく、細かく、細かくなって、それで、それで、0が、残る。
「アハハハハ!!! アハハハハハ!!!!」
愉快なのか、腹が立つのか、悲しいのか
――――でも、やっぱり楽しかったから、俺はあの日も笑い続けた。
『あの人』の、あの笑顔が、俺を見降ろし続ける。
ずっと、見降ろし続ける。
雪はどんなに強く握り締めて形作ったって、焼き払えばただの水。
ただの、一片に過ぎない。人間の体内のほとんどが水だというのだから、結局のところ、これと似たようなものなんだろう。
「アハハハハ!!!!! アーーハハハハハハ!!!!」
完成したものは、憎い。完成した者は、愛しい。
お前は、心なのか?お前は、俺なのか。
――――そもそも、紙片を集めても、それは、誰だというのだろう?
そもそも何の為に、寂しさや切なさを感じる必要があるのだろうか?
そんな感情があったって、いつまでも破られ続け、存在は否定され続けるだけだというのに。俺は存在してもしなくても、変わらないのに。
誰かが、自分自身を呼んでくれたことなど無い。
たった一片の紙切れすら、残らない。
0が残るまで、続ける。
0は唯一の存在なんだ。それは、誰なんだろうな。
「あぁ! あぁ! お前も! ただの、ただのっ……ネジだ。ただの、釘だ、ただの、部品の、」
ただ、俺は、少なくとも、そのときは、生きようとしていたんだと思う。
バラバラになって、部品の一つ一つに戻っていく何かを見て、俺の身体もこれなんだ、何の意味も無い、誰からも呼ばれない歯車の一つなんだと、そう、確認して。
歯車のひとつひとつなんて誰も覚えない。
枠組みの、組織と言う製品の、その名前だけが認知される。
それを、確認して。
2022年6月18日1時33分
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