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艮くんの意識。にしおりをはさみました!
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艮くんの意識。
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***
「鬼の部分を引き出したいんでしょう?」
きっとタガを外さなけば抑制も出来ない。
「僕を食べてごらん」
白い首筋を曝け出して渡辺はまるで何でもないようにそう言った。
「…」
その首筋におそるおそる歯を当てる。尖った自身の八重歯がピッタリとその筋張った首筋に嵌って、何故か背中がゾワリとした。
「そのまま力を入れて」
自分で頼んだクセに怖気付いてる俺を見透かしてか、渡辺は子供をあやすように髪を梳いて優しく促す。
やらなきゃ前には進めない。抑制も出来ない。そうなったら何も言い返せない。…守れない。でも、
「大丈夫」
渡辺の優しい声がする。
「…っ、」
当てた歯に力をこめた。
プツリと皮膚の割く音がした。
「……」
生温かい。割れた皮膚の間から血が流れ出す。鉄の味。舌で掬っても掬っても溢れ出す。苦い。酸っぱい。甘い。
…甘い?
「…っ、ァ、」
後頭部が、ドクリと、脈打った。
触れてる唇が熱い。口のなかが、背骨が、腰の辺りが熱い。甘い。目の前が甘い。頭ん中が、甘くなる。
ガシャンと渡辺がフェンスに押さえつけられた。
「…は、っ、」
割けた皮膚に歯を食い込ませ溢れる血を零さず吸いつくす。血の混じった自身の唾液さえいまは零すのが惜しい。抵抗のない渡辺を押さえつけて無我夢中でそこを舐めとる。
触れた部分が熱い。体内で混じる血液が熱い。甘い匂いに侵されてジクジクと全身が疼きだす。
なんだ、コレ。
止まらない。
ゴリッと渡辺の太ももに硬いものが当たった。
「…ぁ…、」
勃ってる。
制服越しに渡辺の体温を感じる。熱い。熱い。伝わってくる渡辺の熱だけで反応するソコ。
「…」
「…」
押さえつけてた渡辺と目が合った。
「ぁ、」
壊したい。
壊したい。
壊したい。
コロシタイ。
「いいよ」
渡辺の声にハッとして首筋を押さえつけていた両手を離した。
「………あ…、」
首にクッキリと指痕が残っている。
締めようとしたのか首を。殺そうとしたのか渡辺を。俺が?……俺が…?
「艮く…、」
渡辺が差し出した手を反射的に叩き落とす。
「…艮くん」
それを咎めもせず渡辺は固まる俺の頬にそっと優しく触れた。
「震えてる」
渡辺に言われて指先が軽く震えてるのに気づく。止めようとしてるのに力が入らない。止められない。
「…ごめんね」
「…、」
「ごめん」
強張った身体を抱きしめて渡辺は何度も「ごめんね。」だけを繰り返す。どうして渡辺が謝るんだ。謝らないといけないのは俺のほうなのに。
俺…お前を…、
「まだ早かったんだ。…怖がらせてごめんね」
お前を殺そうとした。
殺そうとしたんだよ、お前を。
アレが俺の『鬼』?
「……渡辺…」
だとしたら、どうなってしまうんだ俺は。
開放してしまったら、制御出来なかったら、俺はお前を。
「…艮くん」
俺は生まれて初めて自分のことを、怖いと思った。
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