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艮くんの深層。にしおりをはさみました!
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艮くんの深層。
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***
(鬼さんこちら、手の鳴るほうへ)
「…はぁ」
深夜のバラエティが終わって、変なテンションのパチンコ番組も終わって、外人が始めた通販番組。それをぼんやり眺めながら時計を見た。時間はまだ三時過ぎ。陽が登るまで二時間ちょっと。アホみたいに長い時間だ。夜明けを迎えるとゆうのは。
「アンタ、まだ起きてンの!?テレビ観ないなら消しなさい!」
便所に立ち寄ったおふくろにドヤされて黙ってテレビを消し、ゴロンと寝転がった。なにも起きたくて起きてるわけじゃない。目を閉じればきっとすぐ寝れる。ただそれをしたくない。なぜなら寝るのが怖いから。
何を言ってんだと自分でも思う。
ガキじゃねえんだからと少し前の俺なら笑うだろう。実際笑いとばせりゃ良いのに。笑いとばせない俺が瞼を閉じて思い出すのは、赤い色と柔らかな感触。そして首のもげた渡辺の姿。
「…っ、」
ゾワリと背中に悪寒が走る。
あの日から思い出すのはそればかりだ。渡辺を殺そうとしたあの日から瞼の裏にはそれしか浮かばない。まだ渡辺の首は繋がってるし、学校に行けば俺に話しかけてくる。単なる夢に過ぎない。想像に過ぎない。
だけど想像はする。
眠りにつこうと意識が遠のくたびにその惨事がチラつく。まるで意識が無くなるのを待っていたかのように奥底から浮かび上がる。俺の中がざわついてる。それが堪らなく嫌で。
「早く朝来いよ…」
早く学校に向かいたい。行って渡辺の顔が見たい。アイツが生きてると実感したい。そうじゃなきゃ…。
(鬼さんこちら、手の鳴るほうへ)
聞こえない。何も聞こえない。
「…艮くん、大丈夫?」
「何が」
「目の下、隈が酷いよ?寝てないの?」
「ああ…別に」
覗いてくる渡辺の顔を押さえつけて顔を逸らす。渡辺はしつこく覗いてきて手のひらにグイグイと顔を寄せてきた。手のひらから感じる温かさに安堵する。
「何してたの遅くまで」
「何もしてねえよ」
嘘ではない。
むしろ何もなくて暇すぎたくらいだ。
「言えないこと?」
「だから本当に何もねえんだよ」
「だったらこんな風にならないよね」
「それは…」
「何で寝てないの?眠れないの?」
妙に渡辺がしつこい。
まあ確かに自分でも鏡を見たが酷い顔だ。隈はあるわ、疲れは出てるわ、明るさが微塵もない。もともと明るい人間じゃないが、それを差し引いてもとゆう事だろう。
「…僕には言えない?」
違う。そうゆう事じゃねえ。じゃねえけど。ああクソ、何でこんなに眠いんだよ。渡辺の声が遠い。顔がボヤける。
「艮くん…本当に大丈夫、ねえ」
ぐらつく身体を渡辺に支えられた。本気で渡辺が心配してる。心配させまいと力を入れようとするが入らない。寄りかかって触れた箇所から力が抜けてく。
「少し寝なよ、艮くん」
ダメだ。
寝たら解らなくなる。お前のこと解らなくなる。
「艮くん…気が…、」
気?
「…やっぱり艮くんって…」
何だよ。そう言おうとして口が動かなかった。
ー ぱんぱん、ぱんぱん
身体が動かない。耳鳴りがする。
誰かが手を叩いてる。
「艮くん?」
聞こえないフリしてたのに。
意識が飛んで、それからもう真っ白しかなかった。
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