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18歳以上ですか?
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6
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うつむき加減に廊下を歩きながら、シャツの袖で涙を拭う。拭いても拭いても、次々に溢れてくる。
俺はもうすぐ十三歳になるんだぞ!もうすぐ次の王となる儀式もするんだぞ!強い王となる者が、泣いちゃ駄目だ!
でも、どうしようもなく寂しい気持ちが湧き上がってきて、自分の意思とは関係なく涙が溢れてくる。
泣いてる姿を誰かに見られたら嫌だと、俺はすぐ近くに見えたリオの部屋の扉を叩いた。
「どうされたのですか?」
部屋の中からではなく、背後からリオの声がして、俺はゆっくりと振り返った。
リオが、まだマントを羽織ったまま、俺を見て驚いた顔をしている。
「どっ、どうしましたっ?何があったのですかっ!」
「…別に。リオ、ちょっとだけ部屋に入れて…」
「え?あっ、はいっ」
リオが急いで扉を開けて、俺の背中を押して中へ入れる。更に部屋の奥へ行くようにと背中を押してくるけど、俺は首を振って、その場から動かなかった。
「カエン様、どうぞ椅子へ…」
「いい…。すぐに出るから…」
ズルズルと鼻をすする俺を気にかけながらマントを脱ぐと、リオが柔らかい布を渡してきた。
「袖で擦ると赤くなりますから。これで拭いてください」
「うん…」
布を顔に押し当てて、涙を拭く。
しばらくしてようやく涙が止まると、俺は大きく息を吐き出した。
「リオ、ありがとう。もう大丈夫」
「そうですか?それで、どうしたのです?」
「うん…、なんか、父さまとカナを見てたら、悲しくなってきてさ…」
「はあ…」
「リオも気づいてると思うけど、カナは、少しずつ元気が無くなってきてる。いつも大丈夫だって笑うけど、本当はそんなことはないのに。なんか、いろいろと考えたくないことを考えてしまって、すごく悲しくなった…」
「…そうですね。カナデは辛いとかしんどいとかは、絶対に言わないですからね…。周りに心配をかけさせたくないからだと思いますが、逆に我慢される方が、こちらとしては心配してしまいますよね。せめてアルファム様だけにでも、しんどいと甘えてもいいと思うのですけど…」
「うん…そうだね。今日、ローラントおじさんに薬もらったんだろ?今それを取りに行く途中だったんだ。早くカナに飲んでもらおうと思って」
俺は、扉に手をかけながら言う。
「とても万能な良い薬だと聞きました。カナデに効くといいですね」
「うん」
俺は、リオに力強く頷くと、今度はまっすぐ前を見て歩き出した。
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