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毎日ローラントおじさんにもらった薬を飲んだおかげで、母さまの体調が良くなった。
顔色もよく、城の中を忙しく動き回っている。
そんな母さまの様子を見て、父さまも機嫌がいい。
「カナ、体調がよくなったからって、そんなに動いて大丈夫?」
「大丈夫だよ、カエン。だってもうすぐカエンの十三歳の誕生日と次期国王就任の式があるじゃん!俺が準備をしたいの!」
「でもさあ、病み上がりなんだし、使用人に指図だけしてればいいのに…」
「いやいやいや、俺の可愛い息子のめでたい式なんだよ?自分で準備したいに決まってる!」
廊下を行ったり来たりしている母さまを捕まえて、俺の部屋に引っ張りこんだ。
そして何だと首を傾げる母さまの肩を抱いて、椅子に座らせて問い詰めた。
母さまは、両手を握りしめながら頬を赤くして、興奮気味に話している。
それが全部俺の為だと思うと、すごく幸せな気持ちになる。
「ありがとう、俺の為に。でも無理しないで欲しいな。心配だから。そうだっ、俺にも手伝えることない?」
「ない…っていうか、駄目だよ。カエンは主役なんだから。カエンは王子としてやることがあるだろ?暇な時間があるなら、アルの所へ行って、勉強しておいで」
「…わかったよ」
身体を動かすことは好きだけど、頭を使う勉強は疲れる。
でも、父さまに並ぶか越えるには、もっと勉強をしなきゃいけないとわかっている。
俺が大きな溜息を吐くと、母さまが、立ち上がって俺の頭を撫でた。
「なに?」
「ん、素直でいい子。じゃあ俺、やることがあるから。夜は一緒に食べようね」
母さまが、笑顔で手を振って部屋を出て行く。
俺も軽く手を振り返して、困ったように笑った。
少し体調が良くなったからって、あんなに動いて大丈夫なのか?俺や父さまが、無理をするなと言っても聞かないし。元気なカナを見るのは嬉しいけど、今の反動がいつか一気に襲ってきそうで怖い…。大丈夫だとは思うけど…。
俺は、さっきまで母さまが座っていた椅子に腰を下ろすと、机に置いていた書物を手に取ってパラパラとめくった。
城の中を忙しく動き回っているのは、母さまだけではない。シアンやリオも、使用人も、皆が慌ただしい。
だって俺の誕生日まで、あと十日だから。
各国からの使者も、そろそろ到着するはずだ。
母さまは、「カエンの大事な日までに元気になれて良かった」と、毎日言ってる。
母さまの元気な姿が、とても嬉しい。だけど反面、不安にも思っている。
俺の式が終わっても、母さまは元気なままだろうか。俺が王になるまで、元気で傍にいてくれるだろうか。
今の母さまの元気な姿を見れば見るほど、なぜか胸が苦しくなってしまうんだ。
俺は、ろくに頭に入ってこない本を閉じて、机に顔を伏せた。
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