アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
2にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
2
-
奏の想い 2
次に入って来たのは、山の国マウンのベルク王だ。見た目で人を判断しちゃ駄目なんだけど、俺は緑の短髪のこの王が苦手だ。
マウン王は、形式通りの挨拶をして出て行った。
次に挨拶に来たのは、それこそ本当に苦手な風の国ウィン国のバルテル王だ。俺を襲った時はまだ王子だったけど、五年前に即位した。俺は体調がよくないこともあって行ってないけど、アルファムは即位式に参加している。
バルテル王は、淡々と挨拶をしてすぐに出て行った。
まあ、あの頃から比べると、ずいぶんと大人になって落ち着いた性格に変わったのかもしれない。
…とは思ったものの、あの青い目の奥は何を考えてるのかわからない。
一応気をつけようと小さく頷いていると、「次の方、どうぞお入りください」とシアンが言った。
次に開いた扉から入って来たのは、銀髪に金色の瞳の背の高い男だ。
一瞬ビクリと身体が揺れたけど、よく見ると若いし顔が違う。
「初めてお目にかかります。月の国ルナの王、セレネです。この度はおめでとうございます」
「ありがとうございます。よく来てくださいました。確か俺の五つ上でしたか?いろいろお話を聞かせて頂きたい」
「俺でよろしければ…」
「もちろんです。後であなたの部屋を訪ねてもいいですか?」
「どうぞ。お待ちしてます」
隣に座るカエンが、すごく積極的に話しかけている。
俺は心配になったけど、セレネ王は、前王で父親のシルヴィオとは違って、とても優しそうな雰囲気だ。
にこりと俺達に微笑んで、部屋を出ていくセレネ王を見て、俺はそう思った。
もう十五年以上前の話だけど、シルヴィオ王が俺を攫って月の国に連れ帰った時、すでに后と子供がいたんだ。後にその話を知った時は、驚いたと同時に、すごく腹が立った。
奥さんと子供がいたなら、その二人を大事にしてればいいじゃん!ちょっと気に入ったからって、なんで俺を攫う必要があったんだよ!って。
まあ、あの出来事のおかげで、サッシャと知り合って仲良くなったから、そこだけは良かったと思うけども。
黙り込んだ俺を心配したのか、アルファムが「疲れたか?」と背中を撫でてくれる。
カエンも心配そうな顔で見てきたので、俺は「大丈夫だよ」と笑った。
「カナデ!久しぶり!元気だった?…って、どうしたのっ?」
賑やかに入って来たのは、日の国ディエスの王サッシャだ。
俺を見るなり駆け寄って、両手を握った。
「なんかより一層白くなってない?痩せた?ちゃんと食べてるっ?」
「大丈夫、元気だよ。いっぱい食べてる。歳のせいか少し食欲が落ちたけど」
「ほんとに?悩みとか俺に出来ることがあったら、なんでも言って!カナデの為なら何だってするから!」
「ふふ、ありがとう。ところでリリー王女は?」
アルファムに強く腕を掴まれて、サッシャが苦い顔で手を離した。
一度距離を取って膝を落とすと、「この度はおめでとうございます」と挨拶をした。
「ありがとうございますサッシャ王。母さまが聞きましたけど、リリー王女は来てないのですか?」
「うん、そう。リリーは今外遊中。外遊っていうか、勉強の為に色んな国に行ってもらってる」
「え?すごい!アレン王子といい、次期王となる皆は、頑張ってるんだなあ」
羨ましそうに言うカエンに、俺は少し申し訳ない気持ちになる。
「カエンも、やりたいことや行きたい所があったらやっていいんだよ?俺もアルも応援するよ?」
「え?ああ…うん」
カエンが驚いた顔をして、すぐに誤魔化したように笑う。
何か気になることでもあるのかと、俺は更にカエンを見つめた。
「うん、ありがとう。やりたいことが出来たら、すぐに言うよ。今は、父さまの傍で勉強したいから。皆行動力があってすごいなあ…って思っただけだよ」
「そう…」
カエンは、俺を見てにこりと笑う。
本心からそう思ってるのかもしれないけど、もしも俺の体調を気遣って遠慮をしているとしたら、とても申し訳ないと思う。
それ以上は突っ込んで聞けなくて、俺は黙って俯いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
325 / 427