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奏の想い 3
カエンの誕生日兼次期国王就任の儀式は、厳かにかつ盛大に行われた。
朝から快晴で天気も良く、正面の広場には、大勢の民が集まって歓声をあげていた。
街の方からも賑やかな音楽が聞こえていて、あちこちで祭りが行われているようだ。
形式的な儀式を終え、赤いマントを羽織ったカエンを見て、俺は感激で涙を流した。
十三歳といえば、元いた世界では中学生になったばかりで、まだまだ子供だ。
でもこの世界では、もう大人扱いされる。
そしてカエンは、他の子供と比べても、しっかしている。それは、俺が病がちで頼りなかったから、早く大人にならなければいけなかったのかもしれない。
ーーあんなに我儘でいたずらっ子だったカエンが…。
そう思うと、俺は声を漏らして泣いてしまった。
そんな俺を、アルファムが優しい目をして抱き寄せた。
カエンは、泣く俺を見て照れ笑いをしていたけど。
アルファムと俺とカエンの三人でバルコニーに出ると、城が揺れんばかりの大歓声が上がった。
アルファムや俺の名前も聞こえるけど、カエンを呼ぶ声が一番多い。
「カエンは人気者だよなあ。こんなにも民から愛されてると、安心だね」
「そうだな」
俺の肩を抱くアルファムに、そっと囁く。
アルファムは、この国の象徴である赤い髪をした偉大なる王。
俺は、本当はただの人なんだけど、髪が黒いだけで、神の子だと言われている。
その偉大な王とそっくりの顔で、尊いと言われる黒髪のカエンは、子供の頃から絶大な人気があった。
民から愛されているなら、この先も安泰だろう。だからと言って気を抜かずに、カエンにはよい国造りをして欲しい。
その時、俺が傍にいれば、全力で協力する。
でもきっと、いない可能性の方が高いと思う。
だからアルファムには、俺の分もカエンを導いてあげて欲しいな。
なんて、偉そうに思ってみるけど、俺には導くほどの政治力はない。
ま、心配しなくてもアルファムが、カエンを立派な王にしてくれるだろう。カエンも自身の力で、立派な王になるだろうな。
民に手を振る眩しいカエンの姿を見て、俺はまた涙を流す。
「泣き虫め…」
アルファムが、俺を更に強く抱き寄せて向きを変え、民から俺の姿を隠して、頬に流れる涙を熱い唇で吸った。
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