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「ふむ…これは…。すみません、カエン様。俺にもわかりません」
「そっか…」
急いでシアンの部屋に来ると、たまたま傍を通りがかった使用人が、シアンは会議室にいると教えてくれた。
俺は、使用人に礼を言って、会議室へと走って来た。
会議室には、シアンとホルガーがいた。
ちょうど良いと、俺は二人の前にある机の上に、マントに包んだ手紙の束を置いた。
「カエン様、これは?」
「カナが父さまに書いた手紙だ。父さまの机の引き出しに入っていたんだ」
「そうですか…。で、なぜこれをここに?」
怪訝な顔のシアンの目の前に、一つの封筒を掲げてみせる。
「シアン、ホルガー、これを読んでくれ」
「中を見ていいのですか?」
「いい。とにかく早く!」
「はい」
シアンが封筒を受け取り、中を出して読む。
読み終わるとホルガーに手紙を渡して、ますます怪訝な顔をした。
そして「わかりません」と言ったのだ。
「ホルガー様はどうです?ここに書かれているイグニスの森とやらは、聞いたことがありますか?」
「いや…私も聞いたことが無いな。カエン様、お役に立てず申し訳ありません」
シアンに問われて、ホルガーが俺に頭を下げる。
俺は、ホルガーから手紙を受け取ると、「そうか」と大きく息を吐いた。
「たぶんさ、父さまはカナを連れてこの森に行ったんじゃないかな…。約束した通りにカナと二人で暮らすためにさ…」
「しかし、それはカナデ様がご存命であったらの話。既に命の火が消えてしまったカナデ様を連れて行ったとしても、仕方がないのでは…」
「…俺さ、父さまの気持ち、何となくわかるよ。例え話さなくてもこっちを見て笑ってくれなくても、ただ傍にいてくれるだけでいいんだよ…。自分が話しかけて見て笑うから、それでいいんだよ…」
「カエン様…」
手に持つ手紙が、くしゃりと音を立てる。
鼻の奥のツンとした痛みを堪えて、知らず知らずに手に力が入ったのだ。
「あ…でも…、ちょっと待ってください…」
「なに?」
シアンが、何かを考える素振りで顔を少し上に向ける。
そして思い出したのか、真っ直ぐに俺を見てきた。
「アルファム様とカナデ様が、ご成婚なされてすぐのことなのですが。お二人だけで、旅に出たことがあるのです」
「え?二人だけで?護衛もつけずに?」
「はい。何でもカナデ様のいらっしゃった世界では、結婚した二人は、新婚旅行と言って二人で旅行にいく習慣があるのだとか。だから叶うなら二人だけで旅行に行きたいというカナデ様の願いを、アルファム様が聞いてあげたのです」
「カナに甘い父さまらしいや」
俺は思わず微笑んだ。
甘い顔をして母さまを抱き寄せる父さまの姿が、脳裏に浮かんだからだ。
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