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「カエン様、少し休憩を…」
「わかった」
シアンに促されて机の前の椅子に座る。
シアンがそっと、俺の前に熱い紅茶を置いた。
「どうぞこちらを。気持ちが落ち着きますよ」
「そうだな。ありがとう」
カップを口に近づけると、甘く良い香りが鼻腔をくすぐる。
ひとくち飲んで、『ああ、これはカナが好きだったヤツだ』と懐かしく思った。
俺は、カップの中身を見つめて、ぽつりと呟く。
「父さまは、大丈夫かな…」
「使いの者が戻って来ないことには、詳しいことがわかりません…。何事も無いことを祈りましょう」
「そうだな…」
「ん…」
「リオっ?」
その時、リオの唸る声が聞こえた。
俺は、カップを置いてリオの肩を掴むと、顔を覗き込んだ。
一度硬く目を瞑ってから、リオの目がゆっくりと開く。
「リオ!わかるっ?俺だよ!ここは城の中だから大丈夫だよ!」
「…カエン…さま…」
「そう!なあっ、何があったんだっ!?教えてくれっ!」
「…あっ!そうだっ!早く伝えなければと俺はっ…いて…っ!」
「あ…ごめんっ。背中痛いよな。落ち着いて、ゆっくりでいいから、教えて欲しい」
起き上がろうとしたリオの肩を押して、ベッドに寝かせる。
触れたリオの身体が熱いし顔も赤い。
熱があるみたいだから、今は休ませてあげたいけど、状況を早く知りたい。
リオは、大きく深呼吸をすると、ひどく苦しそうに俺を見た。
「カエン様…、申し訳ありません。俺だけ…逃げてきたのですっ」
「どういうこと?」
リオが、父さまや皆を置いて逃げるような人物じゃないことは、俺が一番知っている。
生まれた時から、ずっと傍にいたのだから。
「リオはそんなことしないだろ。…もしかして、父さまに命令されたんじゃないの?」
「ううっ…、カエン様っ…」
リオが、目を見開いて、ぽろぽろと涙を零した。
やっぱり…。でも、そうだとしたら、父さまは今どうなってるんだ?無事なのか?
「リオ、ゆっくりでいいから、何があったのか話して」
リオは、シーツでゴシゴシと顔を拭くと、深く頷いた。
「あちらの城での生活も落ち着いて、アルファム様は穏やかに過ごされていたのですが…。三日前に、ある男が現れたのです。アルファム様も俺も、とても驚きました。まさか…生きていたとは…!」
「誰?知ってる人なの?」
「カエン様はご存知ありません。シアン様もあの時、あの場にいませんでしたから…。でも、アルファム様も俺も、あいつのことは覚えている!十七年前の、あの夜のことを…っ」
リオが、更に顔を赤くして、吐き捨てるように言う。
十七年前の夜…?何があったの?
俺は、ベッドの傍にある椅子に座って、リオの次の言葉を待った。
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