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18歳以上ですか?
18にしおりをはさみました!
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18
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黒髪ということは、母さまと同じ世界から来たのだろうか?
俺は、少年に話を続けるように促す。
「それで、その男はどうしたんだ?」
少年の膝の上に置かれた手が、小さく震えている。
「はい…。その人は、物珍しそうにキョロキョロと辺りを見ながら歩いていて…。昼飯時だったので、あまり外に人がいなかったのですが…。それでも数人の人達が、カエン様と間違えて寄ってきたんです。その男は、寄ってきた人と何かを話してました。そして話し終えた直後に、男のすぐ横にあった建物が燃えたんですっ!」
「燃えた…。その男がやったのか?」
「たぶん…。周りの人達が慌てて逃げた後も、その男はゆっくりと歩いてましたから。俺も怖くなって逃げたんですけど、男が去って行った先で、次々と炎が上がってましたっ…」
「そうか…。よく話してくれた。ありがとう。君の家族は無事か?」
「はいっ。炎が近づく前に連れ出しましたのでっ」
「なら良かった。この後のことは何とかする。少し不便を強いるが、皆にも落ち着くように言ってくれないかな?」
「わかりましたっ。カエン様、よろしくお願いします…っ」
少年は、深々と頭を下げて、群衆の中へ戻って行った。
俺は、シアンを馬の影に連れて行き、意見を聞く。
「シアン、どう思う?その男…黒髪だというからカナと同じ世界から来たのかと思ってたんだけど。でもカナは魔法なんて使えなかった。この世界に来てからは、練習して何とか少しだけ使えるようになったけど。もしや炎の国の人間か?」
「…かもしれないですね。とにかくその男を見つけて聞いてみないことにはわかりません。きっとまだこの近辺にいるはずです。すでに数名の兵に捜索させてます」
「俺も捜しに行く。同じ黒髪の俺を見て、あっちから出てくるかもしれないし」
「ですが…」
シアンが、渋い顔をする。
俺は、止められる前に早口でまくし立てた。
「ここはシアンに任せたから。少し遠いけど災害時用に作った簡易的な村があるだろう。そこに皆を案内するように。違う街に住んでる親兄弟の所へ行ける人達は、そちらに行くように指示して。あと父さまにも連絡を。全部落ち着いたらシアンも捜索に加わって」
「…わかりました。くれぐれも無茶はなさいませんよう。身の危険を感じたら、一番に逃げることを考えてください」
大きく息を吐いて、シアンが俺を見る。
俺は笑って、俺より少し背が高いシアンの肩を叩いた。
「わかってる。無茶はしない。じゃあ後のことは頼んだよ。あ、兵を二三人連れて行くから」
「承知しました。お気をつけて…」
頭を下げるシアンに手を振って、俺はオルタナに飛び乗った。
シアンに言われて、三人の兵も馬に飛び乗る。
「行くぞ」
「「はいっ」」
俺はオルタナの腹を蹴ると、空ではなく地面を走らせた。空からの方が捜しやすいけど、今は煙で視界が悪い。
とにかく街の周りから捜そうと、俺は煙の少ない風上の方へと向かった。
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