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長い夏休みが終わり、学校が始まった。
後期の講義も、旭となるべく時間が合うように選んだ。でも、どうしても全部を合わせることは出来なくて、月曜日は旭が僕より早く終わり、金曜日は僕が旭より早く終わることになってしまった。
「旭、僕が遅い日は先に帰っていいよ」
「は?帰るわけないだろ。待ってるから一緒に帰るぞ。乃亜が早く終わる金曜日も、絶対に待っててくれよ?図書館とかカフェとか、人がたくさんいる所にいるんだぞ?」
「うん…わかった。でもなんで人がいる所?」
「この前みたいな不法侵入の変な奴が来たら困るじゃん。周りに人がいたらまだ大丈夫だろ?」
「ふ~ん。旭は心配性やな」
「当たり前だろ?乃亜は俺の大切な恋人なんだから」
「こっ…!」
後期の初日に、小腹が空いたからと寄った大学の敷地内にあるカフェで、軽食を食べながら話をしていたら、旭が甘い目をして小っ恥ずかしいことを言った。
僕は、周りに聞かれてやしないかと慌てて確認したけど、みんな騒がしく喋っていて誰にも聞かれてはいないようだ。
「ん?どうした、乃亜」
「旭っ、僕達兄弟と周りには思われてるんやで?こ…恋人とか聞かれたら、どうするん…」
「別に聞かれてもいいよ。そうすれば乃亜を取られないだろ」
「なんや、それ。誰が僕を取るっちゅうねん」
「乃亜さ…、知らないの?おまえは綺麗だから結構注目浴びてるんだよ?俺の乃亜なのにさ、みんなジロジロ見るなよな」
旭が、面白くなさそうにアイスコーヒーのグラスを持って、ズズっとストローからコーヒーを吸い上げる。
その様子を見て、僕は「それは旭の方やん…」と呟いた。
「ん?何か言った?」
「旭こそ、どうなんだよ。よく女の子に声かけられてるやんか…」
「え?そうだっけ?俺、乃亜のことしか見てないから、全然気にしてなかったわ…」
サラリと口をついて出た旭の言葉。
ちょっとモヤモヤしてた僕の気持ちが、一瞬で晴れてしまった。
今までも旭が傍にいるだけで幸せだと思っていたけど、相思相愛になった今は、以前と比にならないくらい幸せだ。
たとえ僕が吸血鬼だとしても、この世に産んでくれた両親に感謝する。
本当に、この幸せが永遠に続きますように。そして、旭に気づかれることなく、ずっと人でいられますように。
そんな僕の願いが、脅かされようとしている。
僕の仲間だという、月島 倭によって。
「乃亜くん!久しぶり。夏休み何してた?」
テーブルの上に置かれた旭の手に、僕の手を乗せようとしたその時、背後から、今一番聞きたくない声が聞こえた。
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