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18歳以上ですか?
会えないうちににしおりをはさみました!
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会えないうちに
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2年ぶりアーヌの王都を訪れたの太陽が沈まなくなる白夜の頃だった。
同じ太陽が地面を照りつけているが、セザンヌほど暑くはなかった。
馬車の窓から見える、王都の外観は以前となんとなく変わっていなかった。
皇城に入る為、坂を馬車が登っていく。
とても長い2年だった。
12歳になったシアン様はどうお過ごしなのかと少しの不安と期待に胸が踊る。
「お待ちしておりました、ハセラント公」
なんとなく顔をを覚えている皇城の侍従に出迎えられる。
もう『殿下』と呼ばれる事はない、
「ようこそアーヌへ。
道中お変わりはありませんでしたか?」
「そうですね、2度目ですからなんとなく旅の行程はわかっていましたから、それ程疲れもありませんでした」
それでも旅路は長く、国に入るまでは暑さが身にしみていた。
「それはようございました。我々も陛下もハセラント公に会えるのを楽しみにしておりましたから」
「……光栄でございます」
世間話をしながら、皇城の中を進むと謁見の間に通された。
先に椅子に座っていると、程なくして皇帝と皇太子が現れた。
「この度はお招き頂き」
「やぁフォルダム君久しぶり」
「………」
「まぁ座っていろ。疲れただろう」
「失礼します」
向かい合うように彼等も椅子に座ったが、この雰囲気は公的な物より私的なものな気がした。
「旅路は何も無かったか?」
「はい」
「それはよかった。お前に何かあったらとシアンが心配していたからな」
「……ご心配をおかけしました」
「まあまあ陛下、そういう話は本人同士でいいでしょう。公爵を継ぐのだいぶ大変だったらしいね?」
2年も掛かったのは、皇帝の勅令という形だったので同性婚の改正案はすんなりと通ったのだが爵位の継承でドロ沼の攻防戦が繰り広げられたからだ。
皇帝の勅令という形にもかかわらず公爵が判を押さなかったからだ。
どんなにアンナに好条件の新たな嫁ぎ先を提示してもそれは変わらず、それに賛同するようにただでさえ同性婚にあまりいい顔をしていなかった貴族や司教達はこぞって反対をした。
彼等もまた独立以来のこの国の歴史を、前例のない新公爵からルバートの民を守ろうと、命懸けだったのだ。
もうルバートでなくても妥協をしようとも思ったが、恥を書くのを承知で、今さら婿養子として迎え入れてくれる貴族はどこにもいなかった。
長引く膠着状態を変えたのは意外にも民の声だった。
深夜遅くに宮に訪れたのは若い女と男だった。
『ここに数百人分の署名があります』
そう言って彼等が渡したのは束になった紙だった。
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