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『私達は殿下と同じ、同性愛者や自分の性に違和感を覚えるものの集まりです。
この度新公爵になられるのにお困りだというので、少しでもお力になれれればと思い参りました』
『殿下のアンナ様への態度に納得ができるわけではございません。
しかしこの国が変わるのなら、私達のような者達が誰かにおかしいと笑われたり、法によって自分の家族を家族と呼べなかったり、自分を偽り続けながら生きていく必要がもうなくなるのだとしたら!
喜んで殿下の為に、この名を世間にさらします。
だから必ず新公爵になってください』
『この署名の中にはルバートに住んでいる仲間もいます。世論に負けず必ずルバートの公爵になってください。
我々が性的思考だけで、世間から後ろ指をさされたり、コミュニティから締め出されることはもう我々の世代で最後にしてください』
普通の外側の人間はこの国にもいたのだ。
そして彼らは声を上げる時を待っていたのだ。
『……ありがとう』
久しぶりの他人の前で涙が出た。
数百人分の署名は、貴族たちや司教、そして世間に大きな影響を与えた。
この問題は雲の上の人間だけではなく、もしかしたら自分のすぐそばにあることかもしれないからと分かったからだ。
かくして国中を巻き込んだ話題になり、署名は連日宮に届くようになった。
そして公爵がついに判子をついた。
『殿下、私は娘のこともありますがルバートの民のことを考えて、人とは違う、交わした約束を守らない貴方に後を引き継がせることを拒みました。
しかしルバートにもいたのですね…
私は知らないうちに守るべきものを傷つけていた、不甲斐無いおいぼれです。
殿下、私とは違う貴方にルバートをお願いします。
最後にどうかこの老いぼれと約束してください、もう先の事を見据えて誰に対しても誠意ある行動をとると』
それは公爵の体から絞り出された様な言葉っだった。
『必ず、お約束いたします』
そうして、臣籍降下の行事が一通り終わり、アンナの新たな嫁ぎ先が決まったのを確認して、ルバートにやっと落ち着くことができた。
初めの頃は、領民も中々心を開いてくれなかったり、冷やかされたりしたが、あの署名に名を連ねた者達が色々と助けてくれた。
『公爵様がみんなに認めてもらえるなら、私達も認めてもらえるような気がするから』
そう言って彼女はよく領民との間を取り持とうとしてくれた。
そうした努力が少しずつ実を結びルバートも、国も落ち着いてきたころの皇帝からの便りが来たのだった。
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