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叔父と友人の魔神化①にしおりをはさみました!
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叔父と友人の魔神化①
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ああ、すっかり忘れていた。
今日はというかもう朝方だったけど、もうちょっとだけ休んでけと言ったボスザルの言葉に甘えて、俺はそのままお昼頃まで爆睡してしまった。
目を覚まして、餌をパクつく俺の頭の中には鬼のような形相をした輝彦さんが浮かび上がる。
携帯ずっと鳴ってたぞ、ってそれを投げられて、着信件数を確認した俺の顔がサッと青ざめた。
さすがに通報まではされていないだろうけど、物凄く心配をかけているという事だけはわかる。
当たり前だ。
取り敢えず叔父を安心させてあげなければと、俺は輝彦さんに電話をかけた。
うん、漏らしそうな程怖い。
「帰った方がいいんじゃねぇのか」
「…ですね」
出なかった事にほっと胸を撫で下ろす。
「送る」
「え、いいですよそんな…」
自分だってまだ万全な体してないのに。
「またお前に何かあったら俺が困るんだろ。正直今の俺にはどうだっていいがな」
「………」
「さっさとしろ」
言葉はキツイけど、でもイヤな気持ちにはならなかった。
それに、どうでもいいとか言ってるけど、知ってるんだ。
──そうだよ、それでいいんだよ
伊崎という男は確かにそう言っていた。
その口ぶりからするに、ボスザルは交渉に応じたって事だろ?
「おい」
「あ、はい」
たとえそれが可愛がってるペットの為だったとしても、嬉しいんだ。
記憶がなくなっても尚、この人は俺の為に何かをしようと動いてくれる。
その動機や理由は全くの別物だったとしても、俺は嬉しかった。
「で、取り敢えず言い訳を聞こうか」
その夜。
いつもより早く帰ってきた輝彦さんはやっぱり鬼のような形相をしていて、呼びつけられるまま俺はリビングの床の上に正座していた。
キッチンでは大魔王が至極楽しそうに俺を見詰めている。
くそう…。
「祐介。夜中に外出して怪我して帰って来て、ちゃんと俺に説明出来るんだろうな」
「………」
「お前が口を開くまで、俺は許さないぞ」
怖い。
怒るのは当然だし心配かけたんだから説教されるのも当たり前だ。
低い声で窘められて、ここまで怒っている叔父を見るのも初めてで、俺の背中がじっとりと汗ばんでいく。
何て説明すればいいのかわからずに悩んでいた俺だったが、とりあえず昨夜の事を抗議してからにしようと、俺はゆっくり口を開いた。
「えっと、簡単に言うと…」
「何だ」
床を見詰めたまま、早口で捲し立てる。
「昨日の夜それはもう長い時間未成年の俺が聞いてはいけないような破廉恥な声が遠慮なしに俺の部屋まで届いて寝られなかったのでたまらずに外に逃げましたというのが外出した理由です」
「………」
「ぶっ、お前起きてたのか」
「はい起きてましたというか誰かさん達のせいで全く寝られませんでした」
しばらく続いた沈黙の後、輝彦さんは深くため息を吐き出した。
「…まあ、そこは俺が悪いとしてもだ、その怪我はどうした」
ほっぺと、それから首をぐるぐる巻きにしてある包帯を見ながら、輝彦さんはまた強く姿勢を作り直した。
「こ、こけて…」
「どんなこけ方したら首に怪我なんか負うんだ」
「…わかりません」
「祐介」
また拉致られてこんな怪我をさせられたなんて言ったら、それこそもう外出禁止だと言われそうで舌の動きが鈍くなる。
正座をしたまま床に視線を這わせ、汗で濡れた手をズボンで拭き取るように俺は膝の上に両手を置いた。
「…えっと、」
「ん」
「マンションの外にいたら知らない人に声かけられて車に乗せられて連れてかれた工場みたいなとこでナイフで怪我させられた」
「………」
「……バカ介、マジで言ってんのか」
「…はい」
黙ってても隠してても、こんな目立つ場所に傷を負っている以上もう誤魔化しきれない。
だから観念して全てを自白した。
輝彦さんがどんな顔をしているのかなんて怖くて見れなかった俺は、とりあえずそのまま床に視線を這わせていた。
「祐介」
「…はい」
「それは拳聖が絡んでの事か」
「………」
「呼べ、今すぐだ」
「は」
ソファに座り足を組んでいた輝彦さんが、訳の分からない事を言うなり勢いよく立ち上がる。
「拳聖をここに呼べって言ってるんだ」
「………」
「記憶がないとか関係ない。お前がこんな目に遭うのはあの男のせいだろう。記憶を失くそうがどうしようがそんなもの俺には全く関係ない。どんな状況になろうと、あの男には最後まで責任を取ってもらう」
「輝彦さ、」
「早くしろ!」
怒鳴られて、叔父が相当頭にきている事を思い知る。
それは当然の事なのかも知れないけど、記憶がないボスザルと対峙させたって、何の解決にもならないんじゃないかと俺の背中を冷たい汗がいくつも流れ落ちた。
「バカ介、輝彦マジ切れしてるから言う事聞いとけ」
この状態になったらもう誰も止められない、と大魔王に言われて、俺はしぶしぶポケットから携帯を取り出した。
助けてください(号泣)
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