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第14章ー2 飼い主にしおりをはさみました!
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第14章ー2 飼い主
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結局。
澤井に手を引かれて、田口への想いと決別することにしたのに。
心は重くて苦しい。
「……ッ、は……ん」
昨晩の帰り道。
誘われた澤井の車でキスを受ける。
強引に助手席に押し付けられて、何度も何度も。
濃厚に絡まる舌。
どちらともない唾液が口角を伝って溢れ出す。
頭の芯がぼーっとして、何も考えられない。
数週間に及ぶ疲労と寝不足は、彼の思考を鈍らせるには充分だったのだ。
「だ、だめ……、こんなところでは」
「どこならいい?」
「どこって……」
一度与えられ、覚えた快楽の記憶は、体に刻まれている。
澤井が触れてくるたびに身体が疼くのだ。
嫌なはずなのに。
嫌じゃないのか?
離れていった唇が、保住の耳を嬲る。
「はッ、や……ッ」
深く息を吐き、澤井を押し返す。
狭い車中では、身動きが取れない。
保住を押さえつけている手とは、反対の手を伸ばし、シャツを手繰り上げる。
「は……、あ、あ……ッ」
耳を舌で舐めあげられると、水音が直接能に響いて存在感を増す。
ぼんやりと、感覚と音に支配されかかるが、のんびりしている場合ではない。
脇腹を撫でていた手が下がり、保住のものを掴んだからだ。
「ひッ」
一気に意識が引き戻された。
あの夜のことが、フラッシュバックのように蘇るのだ。
「だめ……っ、澤井さん……ッ」
「出せ。保住」
熱っぽい視線がじっと保住に注がれる。
目が離せない。
「いや、……です」
「焦らすな」
大きな手で包み込まれ扱きあげられると、腰が跳ねる。
「や、」
彼の反応に、澤井は満足しているのか。
開かれた首筋を吸い上げた。
「は、はッ……ッ」
跡が残るからやめて欲しい。
掴んでいた腕を手放し、澤井の口元に持っていく。
「や、止めて」
「お前はおれのものだ。飼い主が所有物に印をつけて何が悪い」
澤井の愛撫は執拗だ。
何度も、何度も首筋を吸われる。
眠い。
怠い。
「ッん……っ」
疲れた身体は容易に絶頂を迎える。
どうでもいい。
もう、どうでもいいのだ。
肩で息をして、澤井を見る。
何故、この男にすがるのだ。
自分は。
彼は、不敵な笑みを浮かべて保住の目元を拭った。
「哀れだな。物欲しそうだぞ。保住」
「……」
返す気力もない。
助手席のシートに身を預けて、ただ呼吸を整えることしかできない。
情けない。
哀れ?
本当にその通りだ。
自分は、哀れだ。
多分。
どん底まで落ちた。
這い上がれない。
「帰るぞ」
車を走らせる澤井の横顔を見て、逃れられないと確信した。
なのに。
どこかで期待している自分もいる。
また彼が救い上げてくれるのではないかと。
好き勝手なことをしておいて、本当に虫がいい話だ。
何度も何度も。
また田口が助けてくれるって?
「馬鹿か」
昨晩の澤井との邂逅に支配されている自分は、情けない。
不在だった間の申し送りを受ける彼を見てから、視線を逸らす。
こんなにも心が騒ぐ。
だがしかし。
もう、彼を傷つけることは許されない。
この一年半。
やはり、甘えすぎた。
ただの上司部下に戻るのだ。
保住は心にそう決めて、仕事を再開した。
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