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第15章ー5 脱せない関係にしおりをはさみました!
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第15章ー5 脱せない関係
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振興係の初仕事は二日から。
他の部署は、もちろんみんなおやすみだ。
「遅刻ですよ!保住さん、しっかり!」
田口のバリトンの声色に、遠くに行ってしまいそうな意識を引っ張り上げる。
結局、大晦日の集まりを終え、昨日は保住の実家へ。
床に就いたのは朝方だった。
それから、寝付いて目が覚めたのは元日の夕方。
母親が用意したおせちやら、餅やらを食べながら酒を飲めば夜も更ける。
みのりは休みだし。
しかも、昔のアルバムや、作文を披露されて、全く形無し。
田口にとったら、保住の過去を知る時間は幸せ以外の何者でもないが、いい迷惑だ。
保住は、頭が痛む。
「保住さんの幼稚園時代、可愛かったですね」
「言うな」
保住の父親も見た。
彼そっくり。
線の細い男だった。
ほくろの位置が違うくらいだろうか。
澤井が血迷うのも理解できる。
「頭が痛い」
「二日酔いですか?」
「分からん……」
二階に上がる階段で、前を歩いていた田口はいきなり振り返る。
保住は驚いてバランスが崩れる。
「保住さん!」
落下しそうになる寸前、田口は腕を伸ばして保住を支えた。
「大丈夫ですか?!」
さすがの保住も目を見開く。
「すまない、田口」
「おれが悪いです。振り返ったりするから……。すみません。驚かせました」
「いや……」
ドキドキと心臓の拍動が早まる。
田口は暖かい。
腰に回されて支えてくれる腕は、しっかりしていて安心感がある。
付き合っても、いつもと同じ。
上司と部下の関係から、脱することが出来ない。
田口は、遠慮と戸惑い。
保住は、無頓着。
お互いに先に進むきっかけも見当たらないのだ。
こうして、身体が触れ合うとドキドキしてしまう。
距離が近い。
人に触れられるのは好きではないが、田口は別。
そんな事を考えていると、事務所から谷口が顔を出した。
「朝から何しているんです?」
「あ!あ、ああ……あの、おはようございます!そして、あけましておめでとうございます!谷口さん。今年もよろしくお願いします」
田口は大きな声で挨拶をして、保住をそっと階段に下ろす。
「階段を踏み外して。田口に助けられました」
保住はそう言うと、谷口の方へ歩き出す。
「おはようございます。係長。あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
保住が事務所に顔を出すと、渡辺や矢部もいて、それぞれが朝の挨拶と新年の挨拶を交わす。
「今年は、オペラ成功です。頑張りましょう」
保住の言葉に四人は大きく頷いてみせた。
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