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27 真夜中の訪問者1にしおりをはさみました!
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27 真夜中の訪問者1
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時計は11時を回っていた。
蒼は寝る支度を整えて、布団に潜り込む。
今日は仕事だった。
休日の星音堂は忙しい。
演奏会がてんこ盛り。
本当だったら、ぐったりしてしまうところだけど、今日はちょっぴり気分が違う。
明日は月曜日だし。
関口が帰ってくるのだ。
なんだか嬉しくなってしまう。
最近ずっと、一緒に寝ているキマちゃんをじっと見詰めて目を閉じて寝る。
「は~!布団はいいな~」
ベッドの中で伸びをして、寝返りを打つ。
さて寝ようか。
そう思った瞬間。
不意に玄関のチャイムが鳴った。
「!?」
ビックリして身体を起こす。
誰だろう……。
こんな遅くに。
しかも、今日は日曜日だ。
しばらく迷っていると再びチャイムが鳴った。
「……」
蒼は仕方がなくベッドから降りた。
「どなたですか?」
こそっと玄関を開けると、そこには長身の男が立っていた。
「あ……れ?」
「こんばんは。蒼。夜遅くに悪いね」
男は、関口圭一郎。
「お父さん……」
「お父さんか。なんだか恥ずかしいね」
「あ!すみません!」
「いやいや。いいんだよ。お父さんだもんね。他に呼びようが無い」
圭一郎は苦笑する。
こんな時間にどうしたのだろう?
いや。
常識はずれな彼に、時間は関係ないのかも知れない。
「あの。関口、今日は……」
焦って説明をしようとすると止められた。
「分かっているよ。今日はいないんだろう?」
「あ。知っていたんですか」
「うん。今日はね、君に用事があって来たんだ」
「おれ、ですか?」
圭一郎は中を覗く。
「ああ。寝るところだったかい?」
「あ。でも明日、休みなので平気です」
「そうか。よかた。今から出られるかい?」
「え?」
「実はねえ。逢ってもらいたい人がいるんだが」
「?」
圭一郎は、笑顔で蒼を見下ろす。
関口の父親だし、断る訳にはいかない。
「分かりました。着替えてもいいですか?」
快く承諾する。
「ありがとう。無理を言ってしまったね」
「平気です」
先に車で待っているよ、と圭一郎は出て行く。
それを見送って蒼は急いで着替えた。
夜は肌寒い。
カーディガンを羽織って出る。
一体誰と逢わせるつもりなのだろう……。
関口がいないことも知っていたし。
なんだか首を傾げることばかりだ。
鍵をきちんと掛けて降りていくと、高級車が止まっている。
「げ……。これ……?」
蒼がどきどきして近づくと、男が降りてきて後部座席の扉を空けてくれた。
「あ、あの……」
「どうぞ。蒼」
中から笑顔の圭一郎が顔を出す。
「は、はあ」
そうだった。圭一郎は世界のマエストロなのだ。
運転手くらい、いて当然だ。
「すみません」
扉を開けてくれた男に挨拶をして乗る。
「彼はね、わたしの管理をしてくれているんだよ?彼がいないと、仕事の調整もままなら無くてね。ね。有田君」
蒼が圭一郎の隣に乗ると、運転席に座った男は苦笑する。
「大げさです」
「そんなことないよ。感謝している」
住む世界が違いすぎる。
自分のことを自分で管理できないくらい忙しいと言うことだろう。
関口もこうなってしまうのだろうか。
いつか。
世界を飛び回って、もう蒼の手の届かないところへ行ってしまうのではないか?
なんだか不安が募った。
「蒼?眠い?」
「は!いえ。平気です」
「こういう仕事をしているとね、時差ぼけがあったり、スケジュールの関係で、深夜の移動があったりしてね。なんだか時間の感覚が狂うんだよね。失礼なことは重々承知だ。許してくれ」
「いいえ」
関口は圭一郎に似ていると思った。
常識はあまりないけど、身のこなしや、人への気遣い。
この笑顔とか。
なんだか、昨日から関口に逢っていないでいないせいか圭一郎の笑顔が関口と被る。
どきどきしてしまった。
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