アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
59.春の受難6にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
59.春の受難6
-
やりにくい。
それが蒼の感想だ。
まず、社会人になって初めて出来た後輩に対して指導。
戸惑いが大きい。
そしてこの男の態度。
蒼の前に座っている男はだれている。
星音堂の就業規則を読んでいるのに、机に伸ばした腕に顔を付けて、今にも寝そうな勢いだ。
「あの!ちゃんと聞いています?」
いい加減にイラっときて、説明を中断する。
「え?ああ。はい。聞いてます。でも~、なんだかこういうのっておれ苦手で。もっと簡単に説明してもらえません?」
苦手とかの問題か!
「簡単って……、こういう業務のことって簡単にはいかないものなんだよ?最初が肝心なんですから。きちんとやりましょう」
内心、むっとしながらも笑顔で対応する。
しかし、蒼が気を使っていることなんかちっとも分からないらしい。
三浦はあくびをして蒼の肩を叩く。
「そんなに真面目にしなくってもいいじゃないっすか!世の中、楽しいほうがいいんだから♪蒼ちゃん、楽しくやりましょうよ~」
「……」
本当にちゃん付けとか、止めてもらいたい。
一体、どこまで人のことをなめたら気が済むのだろうか?
ぎゅっと手を握り締めて怒りたい気持ちを抑える。
「そうだ!ねえ、蒼ちゃん、せっかく仲良くなるんだったら今晩飲みにでも行きません?やっぱり飲みニケーションっしょ♪」
こういう余計な話になると調子が出てしまうらしい。
にこにこして、いきなり蒼の手を握ってくる。
「!?」
「いいじゃない?」
怒り心頭だった気持ちが一気に萎える。
「ちょ、ちょっと……」
おろおろしていると、不意に扉が開いた。
「お疲れ様!お茶でもどうかな~って思って!」
姿を現した吉田は嬉しそうにお盆を抱えていた。
「吉田さん……」
「どう?進んでいる?」
にこやかな彼に今度は飛びかかっていく。
「わ~!吉田さんって優しいですよね!吉田さん~、蒼ちゃん恐いんです。おれにこんな分厚い資料を読めって言うし……。厳しいんだあ。やっぱり吉田さんにいろいろ教えてもらいたいな~」
蒼はむ~っとして様子を見ていた。
「はいはい。蒼は一生懸命に三浦くんに仕事を教えようとしているんだよ?おれたちもこれは読んだんだから。今日は頑張ってこれ読むんだぞ」
お茶を置いてから吉田は蒼を呼ぶ。
「蒼、星野さんが呼んでいた。後はおれやっとくから」
「……すみません」
ため息しか出ない。
は~っと息を吐いてからさっさと会議室を出た。
すると、廊下に星野が立っていた。
「星野さん」
「ちょっと」
「……」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
440 / 869