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82.不幸はまだまだ続く2
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車の運転もままならない星野。
タクシーで緑の丘クリニックを受診することになった。
恥ずかしいものだ。
平日の昼間である。
待合室にいるのは年寄りばっかりだ。
「いてててて……」
腰を抑えながら入っていくと、白衣の天使、看護師が寄って来る。
「大丈夫ですか?」
「いやあ、大丈夫じゃねーんだよ。これが」
星野は顔をしかめる。
「車椅子をお持ちいたしますね」
「は?」
車椅子!?
冗談じゃない。
ここにいる年寄りの誰一人として車椅子に乗っていないじゃないか。
若い自分が車椅子なんて本当にありえない!
星野は腰を擦りながら、意地でも歩く。
「平気だ。なんとかなる」
「でも」
「大丈夫だから」
前かがみで、苦痛な表情の星野。
ひどい有様だ。
「いててて」
あまりのひどさに、年寄りたちが寄って来た。
「兄ちゃん、大丈夫かい?」
「おれらが抱えていってやろうか?」
あんたたちは足腰が悪くてここにきているんじゃないのかよ!
と、突っ込みを入れたくなってしまうが、そんな元気はない。
さすがの看護師もこのままではいけないと思ったのか。
ぱたぱたと奥に入り、すぐに顔を出す。
「みなさん。急患なのでこの方を先に診察してもいいですか?」
年寄りたちはうんうんと大きく頷いている。
「え、いいって。姉ちゃん」
「ダメです!そんなに痛むのなら早く診てもらったほうがいいんですから!」
白衣の天使どころか白衣の悪魔だ。
なんだか逆に自分の身が危うい気がしてきた。
恐怖におののきつつ、成されるがままに診察室に入れられた星野。
中に入ると、白衣の医師はいなかった。
あれ?
車椅子のままその場に置かれる。
看護師が「先生は処置中なので、もう少しお待ち下さいね」と言っていた。
なんだか落ち着かない。
元々、病院なんか大嫌いだ。
なにをされるのだろうか?
腰の痛みもひどいけど、注射は嫌だな……。
そう思ってきょろきょろする。
と、カーテンの奥から若い精悍な顔立ちの男が出てきた。
このクリニックの医師だろう。
グリーンの術衣に白い白衣を羽織っていた。
「もう少しお待ちくださいね」
「え!はい」
随分、若い医師だ。
大丈夫だろうか?
「無理をしないでくださいって言っても無理なんでしょうから。ともかく、本番までは休まずに通ってくださいよ?出血がひどいようだったらすぐに来てください。いいですね?」
医師の声が響く。
出血って。
大変だなあ。
星野はそう思いカーテンから出てきた男を見る。
「あれ?関口?」
「へ?星野さん!?」
星野はびっくりして圭を見る。
彼は左手を押さえながら立っていたが、はっとして手を隠す。
「お前、どうしたんだよ?」
「いや。ちょっと」
「ちょっとじゃないだろう?演奏会は明日じゃん」
「はは……」
彼は誤魔化し笑いをする。
「それよりも星野さんこそなんです?車椅子になんか乗せられちゃって」
「は!」
そうだった!
こんな恥ずかしい姿を見られたなんて、一生の不覚だ。
「いや、これはだな。その」
今度は自分がごまかす番だ。
おろおろして焦っていると、看護師が医師に説明を始める。
「ぎっくり腰の患者さんです。椅子から立ち上がったときに痛みが発生したようです。相当な痛みで、前傾姿勢じゃないと歩けないそうです。車の運転も怪しいみたいで。本日はタクシーで通院です」
「おい!姉ちゃん!」
「え?」
星野は気まずそうにしている。
圭は苦笑した。
「星野さん。おれ車だから送っていきますよ。待合室で待ってますから」
「……すまない」
ここは好意に甘えるしかない。
星野はがっくりうなだれて医師の診察を受けることになった。
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