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84.暗闇5にしおりをはさみました!
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84.暗闇5
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目の前に出されたビール。
圭はうきうきしていた。
「退院したばっかりなのに。本当に飲むの?」
桜は呆れる。
「だって、おれ打ち上げも出られなかったし。いいじゃないですか」
「蒼に怒られるよ」
「覚悟の上です!」
興奮していた。
桜の音。
素敵だった。
どうしたらあんな音になるのだろう?
自分にも出せるだろうか?
気持ちは逸る。
早く楽器を持ちたい。
早く音を出したい。
そう思った。
「あんた。またすぐに練習する気してるんだろうけど、ダメだからね」
そんな圭の気持ちを読んだのか。
桜は釘を刺す。
「なんで分かったんですか?」
「分かるよ。あたしだってヴァイオリニストの端くれだからね」
端くれ。
そんなわけないだろう!
圭は首を横に振る。
「やっぱり。桜さんはすごいです!おれ、桜さんみたいな音が出したい」
「あたしみたいな音って。あんたはあんたの音があるじゃないの」
「それはそうですけど……」
しかし、そういう風に思ってもらえたと言うことは桜も嬉しいことなのだろう。
まんざらでもない様子だ。
「ともかく。しばらくは楽器持てないなんだから。家の手伝いにでもきなよ。片手は使えるんだろう?」
「へ?」
「ん?」
目が点。
「な、なんで、そうなるんですか!おれは病人なんですよ?」
「病気じゃないだろうが。急に病人ぶるなよ。安静にはしていなくちゃいけないけど、無駄な安静はかえって毒だぞ?」
「だからって、なんでここの手伝いしなくちゃいけないんですか?」
「あんたねえ」
ああだこうだ言っている圭の胸倉を捕まえて、桜は瞳を細める。
「勘違いしてんじゃないの?あんたは永久にあたしの下僕なんだから!そういう生意気なことを言うんだったらあたしを越えてからにしな!」
「ちょ、桜さん……?」
「少し、ちやほやされているからって生意気言ってんじゃないよ?ガキが」
桜の手が離れると、バランスが崩れる。
圭は慌ててカウンターに右手を着いた。
ひどい。
悪魔だ。
いや、魔女に近い。
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