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ミハイル学園③ にしおりをはさみました!
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ミハイル学園③
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「なあ、唯の親って何やってる人?」
1時間目の授業を終えた時の事だった。授業の間の時間は自習をしようと決め込んでいたのに、前の席に座っている軽薄そうなうるさい男から声をかけられた。
「なんだっていいだろ、そんなに親が偉いのが大事か。」
参考書に視線を戻しながら冷たく言い放つが、それが効かなかったのか前の男は変わらない調子で話を続ける。
「ほら、うちの学校で編入生って珍しいからさ。もしかしたら唯の親が有名人とか官僚なんじゃないかって噂になってたんだよ。」
「…言っとくが俺は金を積んでここに入った訳じゃない。他の奴らと一緒にするな。」
「ええ?!」
参考書を捲りながらそう答える。相手は大袈裟に驚いた声を上げているが、期待した答えでない分興味も無くなったことだろう。
そう思っていたが、この男は一筋縄ではいかないようだ。
「じゃあお前、編入試験受かったってこと?」
「…それ以外何があるんだ。あとうるさいからもう話しかけるな。」
「すげ〜編入試験あるのは知ってたけどそれで受かったやつに会うの初めてかも。」
黒板の上にある時計を見ると、もう5分で次の授業が始まる時間だ。こいつが話しかけてくるせいで思ったように自習が捗らない。
「金積んでないってことは唯の親は普通にサラリーマンやってんの?」
「話しかけるなって言ってるだろ…父親は医者だ。もうこれで満足か。」
「へぇ〜医者なら金積むのも有り得るのにわざわざ編入試験受けるなんて偉いな。」
「偉い」というのは、親に金を払ってもらっていないからという意味だろうか。学費や寮費は普通に親が払ってくれているし、編入試験を受けるのだってタダという訳では無い。それが偉いということになってしまうこの学園の感覚は狂っている。
「ん…?小笠原ってことはもしかして、お父さんテレビに出てた?」
「都合の悪いことは聞こえない耳なのかお前は…知らない。そんなような事も言ってた気はするけど。」
「やっぱそうだよな!前俺が出た番組の解説VTRに出てたんだよ。放送後にイケメンだってバズってたから覚えてるわ!」
言われてみれば父親が自分の出た番組を録画して見ていたことがあったかもしれない。自分自身あまりテレビを見ないのでバズっているだかなんだか言われてもよくわからない。
「…お前が出てた番組?」
そう言ってから咄嗟に口を噤む。先程喋っていた内容で少し気になることがあり、つい声に出して質問してしまった。
「そうそう、なんか常識クイズみたいな番組。見てなかった?」
「いや…今のは独り言で…ていうかなんでお前がテレビなんか。」
「唯ってテレビとか見ない人?俺、今をときめく人気俳優なんだけど。」
そう言われて初めて参考書を机に置きその顔をじっと見つめる。自分で人気俳優と言うのはどうかと思うが、確かに整ってハッキリした顔立ちだ。
「そんな見つめられたらちょっと照れちゃうな。」
「…知らないな。」
本当に知らない。それだけ言って次の授業の教科書をバッグの中から探し始める。しかし、その手は止まってしまう。そう言えば英語の教科書だけまだ手元に届いていないのだ。
仕方なく参考書をまた開こうとすると、頭をなにかでポンと軽く叩かれた。
「おい、何して…!」
頭を叩かれたことにより少しイラつきながら視線を上げると、目の前のそいつの手には英語の教科書があった。
更にその教科書は自分の机の上に置かれ、その男は席から立ち上がってカバンを手に取った。
「教科書まだ持ってないんだろ?俺の使いなよ。」
「お前も無いと困るだろ…まさかサボる気じゃ無いだろうな。」
「違う違う、俺これから仕事だから公欠するんだよ。明日返してくれればいいし。」
そう言うとスマホートフォンで時間を確認し、こちらに軽く手を振ってきた。
「じゃあそろそろ行くわ。あ、そういえば俺の名前!星野竜馬って言うんだ。芸名もそのままだから良かったら調べて。」
竜馬は他の生徒にも手を振りながら教室を後にした。
馴れ合おうとは思っていなかったけれど、ありがとうとひとこと言おうとしたときにはもう遅かった。
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