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純真メランコリー 35にしおりをはさみました!
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純真メランコリー 35
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午後の授業に戻って来た西嶋に、律基が綾世に付き添われて早退したのだということを聞いた。
綾世はちゃんと話してくれると言っていたのに、結局なにも聞くことは出来なかった。
…でも……綾世から直接聞きたくない…。
とも、思う。
*****
放課後。
颯斗は部活をさぼって学生ホールに向かう。
……久々の爽やかな青空なのに、走る気分じゃなかった。
何をするでもなく、ホールの隅に設置されているベンチに腰かける。
しばらくぼーっとしていると、扉が開く気配があった。
この時間は、みんな部活動に励んでいる。
だから、こんな本校舎から離れた所にある学生ホールを訪れるのは、休憩中にジュースを買いに来た学生くらいだろう。
無断で部活をサボっている後ろめたさで俯き、その人が早く出て行ってくれることを祈った。
ホール内に、自動販売機の受け取り口へ飲み物2本転がり落ちる音が響く。
それを取り上げた人物の足音は、颯斗の方へ真っ直ぐに歩いて来ると、目の前で止まった。
陸上部の先輩に見つかってしまい、お小言でも言われるのではないかと恐る恐る顔を上げる。
「Here you are.(どうぞ)」
颯斗の目の前に、赤いコーラのペットボトルを差し出して、マークが立っていた。
「…えっと。くれるの?」
英語で何と答えていいのか分からず返した日本語に、理解できたのかマークはにこりと微笑んで頷いた。
コーラを受け取ると、マークは缶コーヒーのプルタブを開けて颯斗の横に並んで座った。
参ったな…話をするにしても、英語わかんないし……。
「綾世……マークさんと一緒に行っちゃうんですね……」
…もぅいいや、日本語で。
別にマークに質問したいわけじゃないし、答えが欲しい訳でもない…。
「俺……どうしよう…。綾世が居なくなるなんて想像すら出来ないよ」
こんな本音、あんな状態の律基の前では言えない。
ペットボトルを両手で強く握り、抱え込んで俯いた。
「想像すら出来ないのに、本当に居なくなっちゃうんだ……どうしよう………」
あぁ、でも綾世からはまだ直接なにも聞いてない。
それって、颯斗の存在がその程度ってことなのかも…。
家族でもないし……。
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