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52
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ちびたちは大人しくお店の端で遊んでいる。
ソファー席に座って、奏太は観察していた。
「すまなかった。偏見があったのだと思う。」
風見さんは、静かに頷いた。
「同性同士のカップルだから、子どもが欲しいだろうと思われたと言うことですか?」
「・・・根底に、あったのだと思う。同性同士は不幸なカップルだと、卑下していたのかもしれない。」
不幸か不幸でないかは、他人には分からない。
本人たちは幸せだと思っていても、男と女が結ばれて初めて幸せだと思い込んでいる人もいる。
男女間の夫婦でも、子どもがいなければ不幸だと決めつける人もいる。
多様化した世界。
ヘトロ同士でなければ不幸というのは、大きな間違いだ。
現に、俺も拓篤と出逢って、充実した毎日を送っている。
「・・・とう、さん。」
「光太郎、父さんは風見さんに酷い事を言ってしまったんだ。」
大吾を拉致した犯人だと決めつけた。
冷静に考えれば、絶対に有り得ない。
彼は、いや、彼らは光太郎のために幾度となく骨を折ってくれていた。
深い愛情の持ち主に、なんと酷い言葉を投げつけてしまったのか。
「大吾を助けてくれてありがとうございました。」
深く頭を下げたおっさんに、風見さんが肩を掴んだ。
「幸せの基準は、それぞれです。わたしは小夜と出逢って初めて人生に色がついた。大吾くんの件は忘れます。」
そう言うと、杉さんが初めて口を開いた。
「・・・子どもは欲しいです。きっとこの人の子であれば、ものすごく可愛くて大切にすると思います。でも、おれは産めません。ただ、その事を不幸だと思ったことはありませんでした。」
風見さんが杉さんに肩を回した。
寄り添ったふたりは、一度見つめ合ってから、おっさんに言った。
「この人と一生共に過ごせれば、それだけで幸せなんです。財津さんは、幸せですか?」
智樹が涙ぐんでいる。
ソファーに呼び寄せて、背中をさすってあげた。
「・・・幸せだよ。妻と、可愛い息子がふたりもいる。」
杉さんが笑顔を見せた。
「同じですね。おれも、幸せです。大好きな人と毎日生活を共にしています。」
光太郎くんが拳を握った。
「父さん、俺も幸せだよ。大輔さんと生活出来て、学校にも通わせてもらって。だから、安心して。」
そう言うと、おっさんは光太郎くんを抱きしめた。
「あぁ。・・・ありがとう。」
なんに対してのありがとうなのか、分からない。
だけど、おっさんは、ありがとうと繰り返した。
「・・・みこも、ぎゅーする。」
「だいごも。」
いつの間にか近くに来ていたちびが、おっさんたちに抱きついた。
全く、やってらんないくらい良い子たちだった。
「・・・一件落着かしら。」
「だな。誤解も解けたみてぇだし。」
鼻をすすった。
と、店の扉が開いた。
「うぉ?!」
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