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序章
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とある男子高校。
取り柄は伝統ある運動部と言うむさ苦しい環境の中に、一輪の高嶺の花が存在した。
名前は兎田(うだ) ひなた。学年は二年。
指定のワイシャツ、セーター、ネクタイに…一般生のズボンと同じ青いギンガムチェックのスカートを履いている、いわゆる、男の娘。
容姿端麗、スポーツも勉強もパーフェクト。さらには家柄も良く、数多の店や企業を展開する今をときめく「兎田ホールディングス」の嫡男である。
そんな彼がご機嫌よろしく髪をなびかせて今日も向かうのは、高校に入学して出来た恋人の元。
その颯爽と歩く姿は、知らぬ者から見ればまさに女子。特に今日は下級生が入学して初めての登校日。
男子校の中を堂々と横切る美少女に誰もが目を奪われ、そして彼女は何者だと噂話を始める。
…そんな好奇の視線にも気付かず彼は歩みを進める。
そして入学したばかりの一年生たちには入りにくい、三年練へとその姿をくらましたのであった。
***
「あまね、先輩。」
三年練の中にある、空き教室。
あまり人の往来が無いこの部屋がいつもの2人の待合せ場所だった。
そこにすでにいた、机に突っ伏す1人の男子生徒。ひなたが声をかけるとむくりと身体を起こしてひなたを見やる。
「おはよ、ひなた」
おいで、と優しくひなたを手招くその人は滝沢 周(たきざわ あまね)。特待生としてこの学校に入学して三年目になる。
容姿こそ端麗だが、ひなたの様に家柄まで良いわけでは無い。そもそも彼には帰るべき家もなく、施設で育ち、特待生は全学費免除のこの高校に入ってからは本屋でバイトをしながら学校の寮に住んでいる。
近付いてきたひなたの手を、周は優しく引く。
細いひなたの腰を抱き締めて、腰掛けたまま下からついばむようなキスをした。
「ふふ…先輩、おはよ。」
「うん」
ちゅ、ちゅ、と子供のイタズラのようにひなたの顔をキスで埋めて行く。
ひなたはそのひとつひとつに小さく反応しながら、くすぐったそうにクスクス笑う。
彼らの朝は、ここから始まる。
そして昼休みもここで過ごし、放課後もここに来て、周のバイトが無い時は談笑して過ごす。
そんな、幸せな日々を過ごしていた。
「周先輩、今日は本屋さんある?」
「…ああ、うん、ある。ごめんね?」
「んーん…頑張る先輩も好きだから。」
「俺もひなた大好き。」
周の「大好き」に幸せそうに笑うひなた。
周はくす、と笑うと再びひなたを抱き寄せてキスをする。
今度は少し空いた唇から舌を捻じ込ませ、深く、深く口付ける。
溶けそうなくらい、幸せで甘い時間。
そんな時間は…予鈴のチャイムで終わりを告げる。
「…もっと一緒にいたいのに…」
「サボっちゃう?…とか、言えない立場でごめんね?」
「ぜーんぜん!ぼくも成績はキープしなきゃなんないし…」
特待生のキープと、嫡男としての役割。お互いの違えてはいえない部分は尊重する。
隣が心地良いのはそのせいもあるかもね、と頼もしい恋人の髪を周は優しくすいた。
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