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『口移し』にしおりをはさみました!
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『口移し』
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久々にいただいた割と大き目な仕事。
先日、某有名社が発表した次世代テレビのリモコンの電子設計というなんともやりがいのある仕事をもらって俺はいつもより更にウハウハしていた。
この規模の仕事がもらえるってことはそれなりにそれなりなレベルに自分が達したってこと。
……だと、俺は勝手に思ってるんだけど。
その内容を再度確認してから先方さんのメールを大事に大事にフォルダに保管する。
わき上がってくる嬉しさとわくわくと…って色んな気持ちが込み上げてきて、それを俺の大切な人に報告したいと思って席から立ち今いる作業室をあとにした。
ドアを開けて外に出て廊下を見渡す…けど。
あれ?
いない?
ホンの数分前にトイレに行くと言って出ていったから…もう帰ってきてもいい頃…って思ってると?
「ん?」
少し先にある休憩室兼喫煙ルームの方から俺の大事な恋人さまの声がした。
引き寄せられるようにそっちに向かって…総ガラス張りのその中を覗き込む。
すると…
その中では小高さんが数名の女子社員達に囲まれながら談笑をしているところだった。
こんな光景は日常茶飯事。
うん。
そうそう。
いつだって小高さんはこんな風に誰かが傍にいてこんな風に楽しそうに笑ってるんだ。
そうそう。
いつものことだ。
社内の人気者である小高さんとお付き合いをするようになってから俺が身に着けたスキル“開き直り”。
別名“自己暗示”。
それを唱えながら俺は静かに作業室に戻り何事もなかったかのように一杯コーヒーを飲んでから…さっきもらったばかりのお仕事に手を伸ばした。
パタン。
すると視界の端でドアが開いて閉じ、俺の…当社の副社長さまがお戻りになられて。
「仙?」
優しく俺を呼んで肩にそっと触れた。
「はい…小高さん。」
「おや?今は二人きりですよ?」
そう言って笑うと小高さんは俺の頬に唇を寄せた。
「すいません、慎二さん…」
「何がです?」
「え、ああ…名前で…」
「ふふ…」
どこか機嫌よさ気な様子が…なんとなくさっきの光景にかぶって心がざわつく。
そう思った瞬間、唇に柔らかな感触が触れて…開いた唇の隙間から……ん??
「あ…ん?甘??」
「僕のキスはそんなに甘いですか?」
クスクスと笑う彼を見ながら口の中にある個体を舌先で確認。
…これは。
「飴?」
「正解です。」
「しかも桃?」
「さすがです。正解ですよ仙。」
頭を撫でてくれた小高さんはもう一度唇にキスをくれてから俺の飲みかけのコーヒーに手を伸ばしてそれを喉に流した。
「小高さんそれ…」
「仙のコーヒーは相変わらず甘いですね。その飴よりも甘い気がします。」
「ええ…多分。」
苦笑いを浮かべる俺をみつめて笑み小高さんはそのままコーヒーサーバーの方に足を向けた。
慌てて席を立った俺は彼の手から自分のマグをそっと外してそれに落としたてのコーヒーを注ぎ。
「このくらい俺がしますよ。」
「いいのですよ仙。貴方は僕の秘書ではありませんから。」
「いいえ…俺は。」
注ぎ終わったマグを手渡して大切な彼を見上げて。
「俺は、慎二さんの、こっ、恋人ですから!」
ちょっとどもりながらもちゃんと言い切ってウンウンと頷いてみせた。
すると小高さんは少しだけ瞳を大きくしてからそれを優しく蕩かせて。
「そうですね。ありがとうございます、仙。」
さっきくれた飴より、俺がいつも飲んでるコーヒーよりも甘く囁いて抱き締めてくれた。
頬を寄せた彼のYシャツからは愛しい彼の匂いがする。
彼の匂いに包まれて…温かな抱擁に包まれて俺は、職場ってことも忘れて彼の胸の中で…口移しでもらった飴よりも甘い、甘い甘い幸せに包まれた。
-END-
by.えりな/2017.9.21.
お題配布サイト【A.M 0:00】さまのお題。
2020.1.5.
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