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七時間目にしおりをはさみました!
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七時間目
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「……え?」
真っ赤だった。
湯気が出るんじゃないかってくらい
俺と目が合うとその瞳はゆらゆら揺れて耐えられない、というように目は閉じられた。
なに、これ
前に感じたことのある感覚
ドクドクとまるで血液が沸騰したかのように巡る感覚
心臓が忙しなく動いて身体の芯までがあつくてあつくて仕方がない
「さえぐ、……」
「ぼくっ!」
初めて聞いた七種の大きい声
驚きと勢いに負けて俺は口を噤んだ。
「ぁ、えと……」
俺と目を合わせたら七種はさっきよりも赤くなってしどろもどろになる。
何度かわからないけれどそれが繰り返される。
俺にまで緊張が伝わって無意識に指先に力がこもった。
パクパクと口を開いて閉じるを何度か繰り返した七種は
今度は少し諦めたようにいつも通り俯いてしまう
でも俺は諦めた七種の本音が知りたくて
本当、自分勝手でごめん
「七種」
「っ」
「急がなくていい、から……ゆっくりでいいから言って」
パッともう一度顔を上げた七種
きゅっと唇を結んで眉を下げて嬉しそうな苦しそうな悲しそうなよくわからない顔をした。
その瞳はやっぱり揺れていて
レンズがなければ俺は手を伸ばしていただろう
「ぼくっ、笹原くんに、頼ってばかりで」
「……」
「ぼくのせいで課題が終わらなくて、申し訳ないのに……笹原くんと放課後、過ごすのが楽しみになってて……笹原くんは、課題の為にやってくれてるってわかってるけど、そうじゃなくて、えっと……」
七種の声は不思議だ。
聴いてるだけで胸の奥がきゅうっと締め付けられる。
それはもう俺が要らないと捨てたもののはずなのに捨てさせてくれない
考えるのをやめると決めたのにやめられない
こうして話せたことに充たされてる自分がいる。
「ごめん、ぼく……」
「大丈夫だから、続けて」
「っ、うん……」
謝るのは俺の方だ
俺の自分勝手で無理に七種に話をしてもらってるんだから
ゆっくりと深呼吸した七種がまた口を開く
「……少し前から笹原くんが、ぼくのこと避けてるって分かって……きっと、ぼくがノロマだから怒らせちゃったんだろうなって思ったんだ。……でも、もしかしたら、明日は来てくれるかもしれないと思ったら、いつの間にか美術室に向かってて………関わらない方がいいってわかってるのに……でも、笹原くんに、またこうして話しかけてもらえて嬉しいって思ってる。」
ごめんね、わけわかんないよね
そう言って七種はまた俯いてしまった。
七種が謝る必要なんかどこにもない
わけわかんないのは俺の方だ
俺から避け始めたのに
今は七種が他の奴と楽しそうに話してたりするだけでもやもやする。
さっきだって知らない先輩に嫌なことされてるのか知らないけれど
触れられてるお前を見て嫉妬してたんだよ
知らないでしょ、七種
俺、お前が思ってるような奴じゃないよ
だって、今俺は俺の事で悩んでるお前を見て
俺の事を考えていっぱいいっぱいになってるお前を見て
可愛いなって思ってるんだもん
「七種」
名前を呼んだだけでこんなに肩を震わせるのに
俺と話せて嬉しいって思ってるんだ。
なにそれ、すっごく可愛い
「ぁ、えと……」
「……」
小さく息を吐いた。
一度は認めて捨てると決めた感情
どうせ無理ならもう本当に認めてしまおう
だから、避けるのはおしまい
七種がそんなことで喜んでくれるなら
俺は自分の気持ちと頑張って向き合う方法を手探りで探すよ
今回のことにまるっきり七種に非はないんだ。
ただの俺のわがまま、自分勝手
だから確認と俺に嘘をつくための理由をちょうだい
「俺の事、嫌いじゃない?」
「へ……?嫌いじゃない、よ?」
「怖くない?」
「……?怖くないよ?」
きょとんっとまるで何の事?と首を傾げる七種
うん、そっか
それだけで十分だ
自分の中で何かが吹っ切れた。
俺はわざとらしく大きめの声でため息を吐いた。
「はぁ〜〜……なあんだ、心配して損した!」
「え、え、え」
困惑の表情を露わにする七種
顔が見えなくても分かりやすいけど顔が見えるともっと分かりやすいね
「俺、元々七種にそんなに好かれてないんだろうなあって思っててさ。無理に付き合わせてたら悪いなあって思い始めたらなんか罪悪感?みたいなの生まれてさ、耐えらんなくなって……ごめん、自分勝手に避けちゃった。」
そういうことにしておく
都合のいい嘘をつく時ほど饒舌になる。
言葉が不思議とぽんぽん口から溢れ出てくる。
まあ全部が全部嘘なわけじゃないけど
「そ、そんな!ぼくが何か悪いことしちゃったんじゃないかって……」
「んーん!七種はなんも嫌なことしてないからっ!ほんっとごめん、もっと考えて行動すべきだった。」
頭を下げれば七種は分かりやすく慌てて手を振った。
そんな事ないよ、と何度も言ってくれる
その優しさに胸が締め付けられた。
ああ、好きだなって
「だからさ、また俺と放課後、話してくれる?」
「う、うん!もちろんっ……ぼくの方こそ、お願いします」
どうか俺の嘘に気づかないで
自分の気持ちは認めてしまったけれど
七種にとって俺はただの友達だから
それ以上でもなんでもないからさ
この時間だけは隣にいさせてよ
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