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5.にしおりをはさみました!
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5.
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「それじゃまた明日。送ってくれてありがとな、智早」
「いや。いつものことだけど、弥斗のことよろしくね」
結局完全に酔い潰れて寝てしまった弥斗はいつも通り悠治が持ち帰ることとなり、智早は店から自家用車を走らせ悠治の自宅前まで二人を送り届けた。
悠治は車から降りて弥斗を抱えると、窓の開いた助手席ですぅすぅと小さな寝息を立てて寝ている恵愛の頭を撫でて仄かに笑う。
「おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
智早は悠治と小声でそう挨拶を交わしてアクセルを踏みその場を後にした。
十数分車を走らせると都内の住宅街に聳え立つ邸宅が見えてくる。
それが恵愛の実家だ。
恵愛は割と裕福な家庭で育った所謂お坊ちゃまというやつで、今はそんな広い家で一人暮らしをしているのだから驚きである。
いつ見ても大きく感じるそれをフロントガラス越しに見上げた智早が車三台は入る広い車庫に熟れた様子で愛車を駐車するとその振動で意識が浮上したのか、助手席に座る恵愛の瞼が震えた。
「…ちーちゃ…、?」
「おはよ、恵愛。家ついたよ、立てる?」
「ん…、」
眠たげに目を擦りながら頷く恵愛の双眸はどこか熱っぽく揺れていて智早は微かに違和感を覚える。
「恵愛、大丈夫?」
「へーき…」
曖昧に返事を返して車から降りる支度を始める恵愛を見て、智早は手早くエンジンを切るとサッとシートベルトを外して運転席から離れ助手席側へと回る。
すると丁度降りようとドアを開けて足を地面に下ろし始めていた恵愛が、立ち上がろうと足に力を入れた途端その身体が不意にグラリと揺らいだ。
「っ…、」
「っ恵愛!」
抱き留めた身体は年中低体温な恵愛には珍しくじんわりと熱を放っていて、ハッとした智早は恵愛の額に触れる。
「うわ熱出てる…。なんか嫌な予感してたんだよな」
智早はふぅ、と息を吐き出してから恵愛を抱き上げ、常備している合鍵で家の鍵を開ける。
必要な物をピックアップしつつ恵愛をベッドに寝かすと、ズボンのポケットからスマホを取り出して連絡先のよく使う項目から先程まで一緒にいた相手の名前をタップした。
短いコールの後、機械越しに聞き慣れた低音が聞こえる。
「ーーあ、もしもし悠治?今さ、恵愛が熱出しちゃって。俺午後から大学あるから、明日夕方の集まりの前に様子見に来てくれると嬉しいんだけどーー…」
そうして皆のーー主に恵愛のお世話係である智早が全てを終えて漸く寝床につくことが出来たのは、深夜二時を回った頃だった。
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