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次の日、雅也は昨日見た光景を忘れられないまま学校に来た。ドキドキしながら着席し、平常心を保とうと心がける。
後から考えてみれば、あの程度のスキンシップといえるくらいの抱擁だった。だけど当時の雅也にとってそれは、禁断の世界を覗いてしまったような、そんなシーンだった。
あれは誰と抱き合ってたんだろう、なんて無粋なことを考えていたら後ろから軽い声が聞こえて、慌てて振り返る。
「はよ、有川。」
「っ、おはよう!」
「朝から元気だな。」
挨拶をしてくれたのはまさに今考えていた彼で、思わず声が裏返ってしまった。顔をくしゃくしゃにして笑う彼は、やっぱり今日も眩しい。
雅也よりも前の方に席がある彼は、横を通り過ぎてクラス中の挨拶を受けながら自席へ向かう。彼の隣の席は、彼と最も仲がいい(と雅也は思っている)大河眞人(オオカワマコト)。
「おはよー統」
眞人は机に突っ伏していた顔を上げて人好きのする笑みを浮かべる。
「おはよう。お前は眠そうだな、マコト。」
彼は眞人の柔らかそうな癖っ毛に指を通しながら笑い返している。
その姿を眺めながら、昨日の彼とは雰囲気が違うなあと考えた。
校舎裏にいた彼は、いつもの爽やかな雰囲気じゃなくて、なんて言うのか、もっと…もっと大人っぽくて…
「んー、昨日遅くまでゲームやっちゃってさあ。」
「は?あの後?」
「うん、面白くて止まらなくてさ〜。」
「やっぱあれ面白いの?今度俺にもやらせてよ。」
「えー、統ゲームへたくそじゃん〜。」
「うっせ」
「いたいって〜も〜」
楽しそうなやり取りを事も無げにやってのける2人は、雅也にとって別世界の人のようだった。
というか、よく考えてみればそもそも昨日のあれを僕ごときが気にするような資格もないよね。
仲睦まじい2人が単純に羨ましいな、と思い目を逸らそうとしたが、ある物が気になって雅也の視線は釘付けになった。
ぐりぐりと頭を揺らす彼の腕を掴む眞人の手首に、見覚えのあるミサンガが見えたような気がしたからだ。
間違いない。昨日の青いミサンガだ。
大河くん、だったんだ…
そう心の中で呟いて、改めて2人を見る。
確かに、2人はクラスの中でも特に仲がいいし、大河くんもかっこいいというより綺麗な顔で、女の子にもモテるって聞くし。異性とか同性とか恋とか僕にはまだ分からないけど、2人ならお似合いなのかもなあ。
「なに、有川くん?」
あまりにジロジロ見すぎていたのか、眞人に低い声でそう問われて慌てて俯いた。
「あっ、や、ううん!ごめん…っ」
「あっそ、変なの」
眞人はすぐに雅也に興味を失って統に向き直る。
それから2人は、授業が始まるまでずっと楽しそうにしていた。
雅也はあのことは誰にも言わずにおこうと、密かに固く心に誓った。
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