アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
変身にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
変身
-
世の中にはどんなに理不尽でも勝てないものがある。
俺にとってのそれは・・・。
「いいから大人しく顔貸しなさいって!」
「姉ちゃん俺用事があるんだって!」
メイクアップアーティストとして専門学校に通っていた姉ちゃんが、久しぶりに帰ってきたのはいいけど俺で練習しようとするのは勘弁してほしい。
「今日はバレンタインでしょ!彼女もいないくせになんの用事があるの!?」
(ひでぇ、いないって決めつけてる!)
「ほっとけよ!今日は悟と遊ぶんだよ!」
「悟くんと?ゲームでも約束してるの?」
「うっせーって!」
「お菓子送り合うんでしょ?」
「母さん!!」
お願いだから黙っていてほしい。
見つかった俺がうかつだったんだけど、お願いだから黙っていてほしかった。
「お菓子?」
「う・・・あ・・・。」
姉ちゃんの目がキラッと光った気がする。
こうなってしまうと元々姉に弱い俺に勝ち目はない。
嫌々ながらも俺は、バレンタインに親友の天城悟(あましろさとる)と彼女ができるまでという約束でチョコを送り合ってることを白状した。
いやだって、母さんからの一つだけとか悲しすぎるだろ!?
「なんてむなしいことを・・・・。」
姉ちゃんには思いっきり憐れむような眼を向けられた。
「言うなよ!苦肉の策なんだから!」
自分でも痛々しいことをしてるのはわかっているけど、仲間うちでの見栄で必要なんだよ。
実際は親友の悟だけど、親戚のみやこちゃんからもらっているってことになっている。
悟の方も同じ、みやこちゃん、本当は別々の子にしたかったけど俺はともかく悟がすぐボロ出しそうだから俺の親戚の子だけど悟とも知り合いってことになっている。
色々聞かれているうちに設定が無茶苦茶になって、幼い頃はよく来てたけれど最近は遊びにきてなくて都心にある家からバレンタインのときだけチョコを送ってくれることになっている。
会いたいとか、写真をみたいとか言われても困るんだよな。
しかたねぇから極度の恥ずかしがり屋で写真が苦手ってことになっている。
そんなことしなくても彼女を作ればいいじゃんって?
できないんだから仕方ねぇだろ!!
「あんたはともかく、悟くんも顔は悪くないと思うんだけどね。」
「ともかくってなんだよ。」
「帝都も悪くないと思うよ?」
「母さん!」
容赦がない姉ちゃんの言葉に、見ているだけで助けてくれない母さんがそう言ってくれた。
「顔立ちが男らしくないだけだよね。」
「母さん!!」
一言多いのがいつものことだけど、それは言わなくていいんだ。
「それは私も同感だけど・・・そんな用事があるならなおさら練習台になりなさい。悟くんがびっくりするぐらい可愛くしてあげるから。」
「だからやめてくれって!」
「大人しく言うこと聞きなさい!せっかく覚えたんだから!」
いくら姉ちゃんでも男と女じゃ、腕力で負けるはずがないのに長年の習慣の賜物か抵抗もむなしくあれよあれよという間にフルメイクをされ、気づけば服まで変えられていた。
「ううううう。」
「すっごい、美少女じゃんさすが私!」
「可愛い!ねぇこっち向いて!」
母さんのテンションが上がっているのは元コスプレイヤーだからなのかもしれない。
「ふふふっ!私にかかればざっとこんなもんよ。今度一緒にイベント連れてくのもいいかもね。」
母さんの影響で、姉ちゃんもコスプレしているんだった。
どっちかっていうと裏方のほうが好きみたいだけど、話に入るためにしているんだよな。
「いいね、なら母さんも久しぶりに人肌脱いじゃおうかな!」
「やめろ!」
(ってかそれなら二人で仲良く遊んでればいいじゃん!俺を巻き込むな!)
この暴走似たもの親子め、俺の言うことなんか聞きやしない!
父さんも、母さんに頭が上がらないから止まるわけないんだけど!
「ってもうこんな時間!?俺行かなきゃ!」
「いってらっしゃい!」
タイマーをセットしておいたスマホが鳴り響き、あわてて姉ちゃんの方を向いたらにっこりと笑われた。
せっかく差し出した手にも眼もくれず、パタパタと手を振っている。
「え・・・メイク落としは・・・?」
結構がっつり塗られたから石鹸じゃ落ちきれないと思うのに・・・。
そっと後ろに隠されている服も返してほしい。
「大丈夫、いける、いける。」
「いってらっしゃい!」
二人がかりで背中を押され、あっという間に家の外へと追い出されてしまった。
「いけねぇよ!!」
我が家の最強二人組は強引にもほどがある。
思わず叫んだら、ご近所の人の目が集まってきて痛かった。
(う・・・仕方ない。行こう。)
このままじゃご近所の奥さまたちの噂の的になってしまう。
女装して奇声を発していたなんて言われたら外も歩けない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 5