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111
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~空夜side~
8月17日
「……暇だぁ。」
部屋でそう呟いた陸玖の方を振り返ると、ベッドから上半身を垂らしていた。
「頭に血上るよ。」
「うぅーーーん。」
野球部が甲子園初戦敗退したことで、吹奏楽部は20日まで休暇になった。
今までほぼ休み無しで突っ走ってきたので、1週間の完全休暇。
大会を観戦し、途中だが15日に帰ってきた陸玖たちも、同じく20日までは休み。
昨日一日は陸玖ものんびり過ごしていたが飽きたらしい。
「宿題は終わったの?」
「甲子園観戦以外にはやることなかったからその時に……ゆうくん厳しかった……」
「あ、そう……」
ホテルに宿題を持って行っていたことに驚きだが、それは突っ込まないでおく。
(まあ、夏期講習のプリントは提出じゃないし、宿題は量多くないからな。)
うん、と頭の中で納得した。
「……じゃあ、デート行けば?」
「デート?!」
「うん。篠田くんと。俺も明日は出かけるし。」
明日から3連休のサッカー部と、18、19と休みのダンス部。
ついに京たちと予定があったのだ。
(最初に約束してからだいぶ経っちゃったな……まあ、そのおかげで俊哉くんともだいぶ仲良くなったけど。)
京と宏樹のキューピッド役だ。自分は俊哉と仲良くしていた方が2人も気を使わないだろう。
(……航には言わなくていいかな……?まあでも、いっか。4人だしな。)
迷ったが自己完結させ、空夜は手を動かす。
漢字の書き取りプリント、空夜は話しながらでも課題を進められるし、頭にも入れられるタイプだった。
「出かけるって、誰と?」
(えっ、食いつくのそこ?)
「誰って、クラスの友達だよ。」
「……ふーん?同じクラスの?」
「そ、そうだけど……」
「へー……」
なぜじーっと見られているのだろう。
「まあいいや。」
「そ、そう……で、陸玖も出かければいいじゃんって話なんだけど?」
「うーん……OKしてくれるかなぁ……」
「だって休みなんでしょ?いいじゃん、休みの日に遊んだって。」
「まあそうなんだけど……デート……ハードル高い……」
「……陸玖ってここでもヘタレなの。」
「うっ……傷つく……」
「ビシッと誘えばいいじゃん。」
「まあ、そうなんだけど……」
「連絡とってないの?」
「いや、LINEはずっとしてる。」
「じゃあ誘いやすいじゃん!」
「うんー……」
「ほら、今やりなよ。」
最後の漢字を書き終えた空夜は、机の電気を消して陸玖のベッドに座った。
「えっ、うそぉ、今?!」
「うん、今。」
「……今?」
「今。」
陸玖は体を起こすと、スマホを手に取る。
それからポチポチとゆっくり文字を打ってかたまる。
「俺が送信しようか?」
「いえ!!!自分でやります!!!!」
深呼吸した陸玖が、えいやー!と声を出しながら送信ボタンを押した。
「……お、送ってしまった、どうしよう!!振られたらどうしよう!!気持ち悪いって言われたらどうしよう?!」
今更である。
そもそも初対面の告白は陸玖の思う「気持ち悪い」には入らないのだろうか。
「……1分が何時間にも感じられ……っうぉぉぉ?!」
「急に叫ぶなよ……どうしたの。」
「き、きどっ、既読ついたっ……」
はぁっ、はぁっ、と息を荒くして、陸玖はスマホをホーム画面に戻している。
それから少しすると、今度は着信を知らせる音楽。
「うぁぁぁぁ?!」
「危なっ!」
陸玖が慌てるせいで手から落ちたスマホを空夜がキャッチする。
「はい。」
「……うわ、ゆうくんだ……!!」
「出なよ。」
空夜の方を見て、それからスマホに視線を戻して、陸玖は電話に出る。
「も、もしもし……」
恐る恐るといった感じで陸玖が声を絞り出す。
相槌を繰り返す陸玖の表情が、だんだんにこやかに、明るくなってくる。
「ほんとにっ?じゃあ明日……12時でどう?」
(お、待ち合わせか。お誘い成功だな。)
何度かやり取りをして、陸玖が電話を切る。
こちらを向いた陸玖は満面の笑みで空夜に抱きついてきた。
「空夜ー!!大好き!!!」
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